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Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」をベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載していました。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや勝手に楽譜イベ内容を補完した妄想小説を掲載中。R18小説・HコミックをDLSITEでダウンロード販売中。イラストや漫画も無料掲載中♪一部パスワードあり
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――香穂子は、音楽科の制服を着て校内を歩いていた。
いつものように練習場所を確保しようとしているのに、なぜだか違和感がある。
夢の中を歩いているように、足元がふわふわとしていておぼつかない。
夢で、学院の中でヴァイオリン演奏をしていることも多々ある。
それをふとした機会に吉羅に話すと、それほど没頭していたり気にかかっていることが多いのだと彼も苦笑していた。

吉羅自身も、学院内で仕事をしている夢を見るのだとも言っていた。
特に期限が迫っている書類の事務処理をしていたり、外回りでの嫌なことがあると反芻するように夢に見ることがあると聞かされた。
一見鉄面皮で常に冷静に見える彼だが、意外に感情表現をしてくれるし、冗談やサプライズが好きなサービス精神が豊かな男性でもある。

彼でも悪夢に追い回されることがあるのかと思うと、夢でまで気の毒に……と思う反面、吉羅のような精神的に安定していると思われる大人の男性でもそうなのだと知り、自分だけではないのだと安堵の気持ちが起きたのを覚えている。

香穂子がいる学院内は、どこかしらに白い靄のようなものがかかり、壁に手を突いてみてもなんとなく頼りない。
夢を夢と自覚している、いわゆる明晰夢というものかもしれないと香穂子は思いついた。
森の広場にはなぜか行き着けなくて、ここのところ香穂子が通いつめていた音楽室に入っていった。

音楽室の奥の方に、音楽科の制服を着た男子生徒が一人佇んでいた。
ここに男子が一人でいるだなんて珍しいと思い、香穂子は好奇心をそそられてその男子生徒の方へと近づいていった。
香穂子の気配を察したのか、少年が振り向く。
その顔を見た瞬間、香穂子の鼓動は急速に早まっていった。


「君は――誰?」
その声、その容貌からして間違いない。
香穂子が今心を奪われている男性、吉羅暁彦と瓜二つの少年がそこにいた。
彼は吉羅そのものだと香穂子は確信を持っていた。
身長こそ割合と高いものの成人の吉羅よりも少し低く、体の造りはふた回りほど小さく感じる。
赤いネクタイは香穂子と同じ学年カラー。
「……失礼だな、人の顔をそんなにじっと見てるなんて。僕の顔になんかついてる?」
紅顔の美少年はややハスキーな声で香穂子に向かって言った。
変声期の途中を迎えているようで、まだ低くなりきっていないその声も吉羅の声のトーンを少し上げたものと似ている。
「あ……ごめんなさい。……あなたが、あんまり私の知ってる人に似てたから、つい……」

それまでは憮然としていた少年の表情が緩み、興味深そうに香穂子に向かって意味ありげな笑いを浮かべた。
「――へえ。それってナンパ?」
「なっ……」
香穂子は唐突な鋭い突っ込みに辟易してしまった。
「よくある台詞だからね。知ってる人と似てるなんて口説き文句。どっかで見たこと、聞いたことあるような陳腐なやり方だなと思ってさ」
かなり生意気な、ズバズバと歯に衣着せない言い草は吉羅のそれとよく似ていた。
容貌はまだ幼さを残しており、見た目からしても気の強そうな美少年の口から、遠慮のない言葉が紡がれる。


「ねえ、あなた……吉羅君、でしょ?吉羅暁彦君」
「僕のこと、知ってんだ?」
あっさりと彼は認めて香穂子の顔をじっと見返した。
「ねえ、君の名前くらい教えてよ。これナンパなんでしょ?」
「――だから、ナンパじゃないってば!」
香穂子はどこまでも突っ込んでくる容赦のない少年暁彦にやられっぱなしだった。
「でも僕は君のことを知らない。同じ一年の学年カラーだけど、学内で君を見た覚えがないよ。転入生?」
「というか、元は普通科だったんだけど、今度音楽科に編入してきたの。日野香穂子です、よろしく」
「ふうん……普通科からか。日野さん……日野香穂子さん、か」

暁彦は香穂子の頭のてっぺんからつま先までを無遠慮に眺めていて、彼女の手にしているヴァイオリンケースに彼の目が留まった。
「日野さんもヴァイオリン専攻なの?」
「ええ。吉羅君もでしょ?よかったら弾いて聴かせてもらえない?」
香穂子の質問に、少しムッとしたような表情になって暁彦は見返した。
「君って失礼な奴だな。人に演奏しろって要求する前に、自分でやってみたらどうなんだ?君の演奏が僕の評価できる水準に達してたら、弾いてやってもいいけど」
口調こそ現在の吉羅とは少し違うが、もう彼の原形とも言うべき素地ができあがっているようだった。
可愛らしく、母性本能をくすぐられるような顔立ちをしているのにその中身は既に辛辣なものが萌芽している。

「じゃあ、一曲弾いてみるから聴いてね。――吉羅君のお耳に適えばいいんだけど」
今香穂子が最も自信をもって弾ける、エルガーの「愛の挨拶」を通して弾いてみた。
暁彦少年は腕を組み、値踏みするような視線で香穂子の姿を睨めつけている。
全部を弾き終わったところで、香穂子は顔を上げて暁彦を見た。
「――ふうん。人に言うだけあって、一年にしてはまあまあじゃない?」
彼は一年生で、実際の香穂子は三年生なのだが……
三年生の基準だとするとダメダメだということなのだろうか。
「もうちょっとポジショニングと、弓の溜めとか安定させるともっといいと思うよ」

アドバイスまでしてくれた暁彦の言葉に、香穂子は戸惑いを隠せなかった。
昔の彼はこんな風に、小生意気だけれど親切で明るく、人懐こい少年だったのだろうか。
すっと人の懐に入ってきて、まるで以前からの知り合いでもあるように自然に振る舞う。
「……じゃあ、約束したよね。吉羅君の演奏も聴かせてくれる?」
香穂子は心臓が破裂しそうなほどの期待に、眩暈がしそうになった。
「いいよ。そうだな、何がいいかな……」
あっさりと許可が下りて、暁彦はケースからヴァイオリンを取り出した。
彼の手にしているそれは、高価なことで知られたメーカーのものだった。

サティの「Je te veux」の演奏が始まった。
少しでも彼の演奏を聴き逃すまい、彼の挙動を見逃すまいとして香穂子は全身全霊を傾けて暁彦の演奏に見入っていた。

凛々しい立ち姿で、初対面の香穂子のリクエストに応えて演奏してくれている。
惜しげもなく晒しているその実力は、既に凡百の高校生の技術水準など凌駕していた。
個人的な感想を言わせてもらえば、事実上香穂子の知る高校生の頂点である月森よりも、この高一の暁彦少年の方が心に訴えてくるものを感じる。
技術も卓越しているが、感情をよくのせるタイプの演奏で、それはまさに香穂子の目指す理想形と言える到達点だ。

アクセントのはっきりとしたドラマティックな演奏で、人の心を惹きつける。
大胆な彼流の解釈を加えたアレンジが施されているようで、それにさえ香穂子は魅了されてしまった。

――凄い。
こんな風に、香穂子の心までを持っていかれるような演奏は、初めて耳にするかもしれない。
決して目にすることなどできないと思っていた、天才ヴァイオリニスト吉羅暁彦の演奏する姿を見られたことで、香穂子の全身の血が熱くなる。
鼓動が常の倍以上に感じるほど精神的に高揚してくる。
泣きたいような、それとも大声で笑いたいような複雑な綾織の感情が香穂子を揺さぶる。
もし今この瞬間に心臓が止まってしまっても、きっと自分は幸福でいられる――


 

演奏が終わると香穂子は呆然としていたが、暁彦が構えていたヴァイオリンを下ろすと、はっとして拍手を送った。
「どうだった?僕の演奏、気に入ってもらえたのかな?」
「……凄い。ほんとに凄かった!あなた、本当に一年生なの?信じられないくらい」
香穂子が昂奮気味に賛辞を述べると、暁彦は照れたように顔を逸らした。
「そこまで凄いわけじゃないよ。これでも、まだ荒いとか雑とかさんざん言われるんだよね」
頬をやや赤くしている暁彦を見ていて、香穂子はどうしようもない気分の高揚が導くまま勢い込んで言葉を継ぐ。
「――あの、図々しいかもしれないけど、お願いがあるの」
「僕に?君が、お願いだって?」
暁彦は怪訝そうに香穂子を見た。

「あなたの時間のある時でいいの。吉羅君の演奏、また聴かせてもらえない?」
香穂子の顔を見たままの暁彦が、訝しげな顔から見る見るうちに微笑を浮かべていった。
「なんだ、そんなことか。いいよ。えーと、日野さんだよね。何クラス?僕のクラスじゃないよね?」
「えっと、まだ編入の手続き済んでなくて、クラスはわからないの。吉羅君は何組?」
「1のAだよ。――同じクラスになれたらいいね、日野さん」
暁彦はヴァイオリンケースを手にし、ひらりと身を翻して音楽室の出口へと向かった。


去っていくその背中を呆然と眺めていて、香穂子は胸が熱くなるのを感じていた。
まさか、彼の演奏が聴けるだなんて。
しかもこれから先も聴かせてくれると、彼は約束してくれた。
最後の一言がまた心憎くて、同じクラスになれたらいいなどとさらりと言われてしまった。
奔放な魅力を持った天使のような明るい少年暁彦に、香穂子はすっかり心を奪われてしまっていた――

(続く)


挿絵は、禁忌だと思っていた高校生の吉羅暁彦君のヴァイオリンを弾く姿です。
公式にないのならば!
ざっと千回以上は理事長を描いてきた私がフルカラーで描く!!
と決意し、下描きから色塗りまで数日間かかって仕上げました。
去年の四月の作品ですが、記念碑的な絵なのでそのまま掲載します。

お話はこの後も46話まで(途中からR18になります)続いているのですが、設定で最初は違うクラスにしちゃったんですが同じクラスにした設定で現在書き直しをしています。
まとまればDLSITEで販売予定です。他の作品も購入してくださった方々、ありがとうございます<(_ _)>

公式で理事長高校生の演奏のお話が出てくるとか演奏姿が…とかまじっすか!!!
という興奮でつい。

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イラストレーターみたいなもの 自営
趣味:
読書。絵を描くこと、文章を書くこと。
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なんだかいろいろと絵や漫画を執筆中。…吉羅理事長勝手ノベライズ+捏造小説他公開中.理事長ゆず風呂漫画3完成して一応完結しましたw





100万人の~をベースに現在の時系列で勝手ノベライズ&完全空想エロありエピソードを書いています。時に微エロ・ハードエロありですのでご注意を!







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