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Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」をベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載していました。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや勝手に楽譜イベ内容を補完した妄想小説を掲載中。R18小説・HコミックをDLSITEでダウンロード販売中。イラストや漫画も無料掲載中♪一部パスワードあり
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――吉羅の曽祖父の住居だったという、菩提樹寮。
香穂子は曽祖父が書斎として使っていた古い部屋で、吉羅とともに穏やかな時を過ごしていた。
万年筆を捜したいと言っていた彼の手伝いをし、物品の整理整頓をして彼にバレンタインデーの贈り物を渡した。

香穂子が一生懸命手作りしたトリュフチョコレートを、吉羅は「おいしそうだ」と言って頬を綻ばせていた。
肝心な味わいの感想は「悪くない」だったのだが。

ラウンジでお茶を飲みながら、ゆったりとした時間の流れを満喫していると――


突如、聞き覚えのある大声が玄関から響いて静寂は破られた。
「あーあ、疲れたし腹減った。さーて、メシだメシ!」
ドカドカと荒い靴音を鳴り響かせて、声の主――不動翔麻がこちらの方へ向かってくる気配がする。
吉羅と顔を見合わせるが、彼は何も驚く素振りもなく、悠然としてラウンジの椅子に腰掛けている。

ちょうどそこへ顔を出した翔麻が、何故かラウンジで仲良くお茶を飲んでいる最中の香穂子と吉羅を認め、目を白黒させていた。
「おわっ!なんだよ、なんでパタちゃんと理事長が二人揃ってこんなとこにいるんだよ?いきなりいられると慌てるじゃねーかよ」
「あの、理事長と一緒に探し物を……」
話しかけた香穂子を軽く手で制し、吉羅が翔麻に向かって説明した。

「この菩提樹寮は、元々は私の曽祖父である学院創立者の住居だった。その曽祖父の書斎があるんだが、そこの物品を整理しに来たんだ。私一人では困難な作業なので、日野君に補助を頼んだ。無事用件は終わったので、ここで慰労のために彼女をもてなしていた」

「……へ、つまり。理事長の曽祖父っつうと、……ひいおじいさん。ここが昔ひいおじいさんの家で、探し物に来たと。でもって何故かパタちゃんが一緒だった、と。ややっこしいな。要は
そーゆーことでいいんだよ、な、パタちゃん?それにしてもびびった。パタちゃんは何度かここに来てたけど、まさか理事長までいるとはさしもの俺も予想外すぎ」
翔麻は吉羅の難解な言葉を噛み砕いて確認する意味で、香穂子に要約して同意を求めた。
うなずく香穂子と翔麻の二人を眺めて、吉羅は閉ざしていた口を再び開いた。


「ここは、私が理事長を務めている学院の一部だ。私は君らが星奏学院の生徒に相応しい態度で生活しているのかを把握していなければならない責務がある。そんなにも驚くようなことでも
あるまい」
「はあ。まあそうっすけど……でも、理事長ったら学院の中で、言うなれば一番偉い人でしょ?そんな人が、日曜の夕方に女子連れて来てるってのは、想像できませんよ」
翔麻は怪訝そうな目つきで吉羅を見ている。
香穂子は口を挟んだ方がいいのかどうしようかと迷っていた。
「まあ、今日は寮の各所を見てみたが、キッチンにせよラウンジにせよ清潔にきちんと保たれているようで安心することはできたな」

翔麻は目を剥いた。
「理事長。まさか、俺らの部屋なんて見てないですよね?」
「――個室には鍵がかかっているだろう?いくら私がここの持ち主でもそこまでの権利はないよ。プライバシーの侵害に当たる」
苦笑している吉羅を見て、翔麻は安堵した様子で胸に手を当てていた。
「あー、よかった。いや、別に見せられないほど汚いとか、変なもんがあるとかじゃないっすからね」
香穂子が翔麻に視線を向けると、何故か彼が抗議してきた。
「なんだよパタちゃん。そんな疑ってるよーな目で見んなよ」



「不動君。その、パタちゃんとかいうのは日野君の渾名か何かなのかね?」
「へ?ああ、そうっすよ。こいつと俺、まあ所謂幼馴染ってやつなんですけどね。こいつ、今も昔も変わらずにおっちょこちょいで何かと忙しなくパタパタ走り回ってるでしょ?でもって、幼稚園の頃に呼んでた呼び方で、つい今も呼びかけちまうわけですよ」

「……ほう。まあ、言い得て妙とでも言おうか。当たらずとも遠からずといったところか」
吉羅は意味深な笑いを浮かべつつ、ちらりと香穂子に視線をやった。
「いいえてみょう?って?」
翔麻が訊き返す言葉に、吉羅は溜息を一つついた。
「そういった表現に相応しい、というような意味だ」
「理事長が話してるのって、俺らが知ってる日本語とは次元が違うっつか。まあ、住む世界が違うっつうのか――」

「そうかね?君のお兄さんの、教生をしていた不動葉介君、だったか。彼もなかなかの文学青年のようだったが」
「身近にいながら、あいつほど理解不能な存在はないっすよ!なんだか横文字の長ったらしい小説読んで、キザッちい、ケツがかゆくなるよーな訳のわかんねえ詩とか読んでるし」
「……そういえば、だな。君のお兄さんについては、少々職員室での話題に上ったことがあるんだが」
「へえ?どうしてそんなことに?」
翔麻は目を大きく見開いた。

「ここにいる日野君が、彼の幼馴染だからといって、教生と生徒という以上に親しげで、贔屓が過ぎるとね。彼の担当教官が愚痴っていたし、実際に、職員会議でも話題になったほどだったんだよ」
吉羅は冷静に話しているが、当然理事長である吉羅もその案件は把握済みなのだろう。
教職課程の単位取得に悪影響はないのだろうか。

「あの馬鹿兄貴、そんなことやらかしてやがったのか。……わかりました、あの馬鹿には俺がしっかり、よーく言い聞かせときますから!」
翔麻が任せておけとばかりに、どんと胸を叩いた。
「ああ。君たちの同好会活動についてもだね。金澤先生から報告が上がっているが、同好会として、十人所属していて、活動が定期的に継続しているなら、部活動として正式に承認してもいい」
「やった、マジすか!」
「ああ。残念なのは、そうなる頃には、君はもう卒業してしまうということだな」

それを聞いた途端、直前まで喜色満面だった翔麻の顔から笑みが消えた。
「うあー、そうだったか……肝心な俺の活躍の舞台は……」
しかし、一旦落ち込みかけたものの、すぐに気を取り直したのか翔麻の表情が明るくなった。
「それまでの間、全力で頑張れば済むってことだ!」

大声をあげた翔麻の腹の虫が鳴り響いた。
「あー、そうだった、メシメシ!じゃあ俺あっち引っ込むから」

踵を返そうとする翔麻の背中に、吉羅の声が追いすがった。
「――不動君。赤点の教科の追試があるようだが、試験勉強もしっかりと頑張るように。高校を卒業できず、留年して日野君と同級になってしまうのは困るだろう?」

「うえっ!理事長はそんなことも知ってるんすか。勘弁してくださいよ」
「寮生活が気まますぎてよくないんじゃないかと、君のお兄さんも心配しているんだよ。どうだね、退寮して兄上と同居しては?」
「うわ、それだけは勘弁!参った、勉強勉強っと」


吉羅にやり込められた形で、翔麻は部屋に戻って行った――


「……日野君。君は不動とそんなにも親しかったのかね?」
「え?……いえ、別に、すごく親しいというわけじゃなくて……翔麻先輩は、誰にでもあんな感じだし。全然そんな」
香穂子が翔麻と名を口にした途端、吉羅の眉が僅かに顰められた。
「あ、あの。教生の葉介先生との区別で下の名前で呼んだだけで。別に他意は――」

「さあ、もう夜にもなろうとしている。……君を送って行こうか」
吉羅は素っ気なく言い放つと席を立ち、香穂子の前に進んだ。

吉羅はむっつりとした表情で押し黙ったまま、早足で駐車場へと向かって歩いている。
香穂子がやや小走りにならないと追いつけないほどの速度だ。
「ま、待ってください、理事長。私、そんなに早くは歩けなくて――」

アスファルトにつま先がひっかかって、香穂子はそのまま前へつんのめって転びそうになった。
咄嗟に吉羅が後ろを振り向き、香穂子の腕を掴んだ。
危うく転びかけた体勢から救われた香穂子だったが、その口から詫びの言葉がこぼれた。
「……ごめんなさい」
「君が謝ることはない」
「いえ、……不動先輩のことです。誤解しないで欲しいんですが私、あの、どっちかというとあの先輩、全然男として見れないっていうか」

「誰も誤解などはしていないと思うが?」
意地悪そうな笑みを浮かべた吉羅は、香穂子の慌てた顔を窺う。

「……ひいおじいさまの書斎、とても素敵でした。なんだか、すごく落ち着ける雰囲気だったというか」
できるなら、もっと長く二人だけで過ごしていたかった……
そう言いたいが言えなかった。

「まあ、今回は貴重な万年筆とやらを探すという目的があったのと、私一人であの広い部屋の
捜索はとても困難だったから、君に助力を願ったわけだが。……君があの場所を気に入ったのなら、今後も入室を許可しないでもない」

持って回った言い方だが、香穂子はその内容を把握した。
「さて。次はホワイトデーとやらが控えているわけだが。――それまでに、君がどこへ行きたいとか、何が欲しいとか、希望があれば考えをまとめて、事前に私に知らせてくれたまえ。――なに、健気な手作りの品の返礼というわけだからね。遠慮することはないよ」

香穂子の考えを見抜いたかのような言葉を言われ、彼女の心は弾んだ。
今回は、思い切って手作りにしてよかった……
香穂子はそれから約一ヶ月近くもの間、大いに悩み、吉羅へ伝える希望に期待を膨らませることになる――

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>tokieさん
コメントありがとう~♪リクエスト応えてみましたが、普段殆ど接点のない翔麻先輩と理事長という取り合わせを
どう料理しようかな?と思ったらこんな感じに。そうそう、理事長は割と時々おとなげないので
それから今回のひっかかりポイントは、誰のことも呼び捨てにはしない理事長が、翔麻先輩に対しては
「不動」と呼び捨ててた!これが意図的で不機嫌さからきてるのならと考えてこーゆー展開にしました。
葉介さんの贔屓が過ぎるって問題もとうに把握済みなくせに意地悪理事長w

翔麻先輩・火原っち・土浦君はですね、「健全な男の子!」というカテゴリーというか。
ちょっと不器用で女の子の気持ちを察するのが苦手とか。土浦君なんかは典型的ですね~
翔麻先輩もまだ45章過ぎですが、こっからどうやって恋愛に持っていけるんだという感じで(^_^;)
単に私が理事長の読めなさ加減と、大人の所作にハマってるので自然と翔麻先輩はじゃれあう男友達

視点でしか見れないというだけの話なのかも…(^_^;)
yukapi URL 2016/03/03(Thu)16:26:03 編集
プロフィール
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yukapi
性別:
女性
職業:
イラストレーターみたいなもの 自営
趣味:
読書。絵を描くこと、文章を書くこと。
自己紹介:





なんだかいろいろと絵や漫画を執筆中。…吉羅理事長勝手ノベライズ+捏造小説他公開中.理事長ゆず風呂漫画3完成して一応完結しましたw





100万人の~をベースに現在の時系列で勝手ノベライズ&完全空想エロありエピソードを書いています。時に微エロ・ハードエロありですのでご注意を!







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