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Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」をベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載していました。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや勝手に楽譜イベ内容を補完した妄想小説を掲載中。R18小説・HコミックをDLSITEでダウンロード販売中。イラストや漫画も無料掲載中♪一部パスワードあり
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――正月三が日。
この期間だけは、異様なほどの静けさに覆われる街中が、私は嫌いではない。
今時はデパートやスーパー等も元日から営業するのが当たり前であるかのように店を開いている。
正月もまた勤勉であらねばならないというのは、日本人特有の勤労感覚ではないのだろうか。

この歳になると、浮き立っていく街の喧騒にも心が騒ぐことなどない。
年越しの最中に書類の仕事をしていて、気付くといつのまにかテレビが新年を告げていた。
そうしていて思うのは、年が改まったからといって、さして私の置かれる状況が激変するわけでもないということだ。

学院は相変わらず経営の危難を迎えぬよう気を配らねばならない。
強いて言えば、これからが受験シーズンを迎えるので、私の多忙さにも一層の拍車がかかる見通しだけはわかっている。
いくら消化したつもりでも、次から次へと決済書類の山が湧いて出てくる。
尽きることのないルーティンワークに晒されているうちに、いつしか時間の感覚や、季節に対する感覚さえも鈍磨していくようだ。

――さしもの私も、疲れを感じているようだ。
ネクタイを緩め、ソファにゆっくりと体を沈める。
このまま作業を続行しても益がないので、少しの休憩と仮眠をして、作業効率の向上を図ろう。

ドアがノックされる音が響く。
それを夢のように漠然として捉えつつも、瞼が重くてたまらない。
今日は正月の三日だ。
よもや訪問者などはあるまい、年始回りは通常の業務が開始される明日の四日以降のはずなのだ。

私の返事がないので、来訪者は再び扉を叩いた。
この、軽く柔らかい叩き方には覚えがある。
「……どうぞ」
少しの間を置いて、私はどこか寝ぼけたような声を出した。

「……失礼します」

少女の高く澄んだ声とともに、空気の色までが変わっていくようだ。
彼女……日野君は、ピンクを基調とした可愛らしい服装をしていた。
ソファに横になっていた私が身体を起こすと、彼女はやや驚いた調子で私に声をかけてきた。
「あ……寝てらしたんですか?もしかして体調が悪いとか?」
「いや、そういうわけではないよ。ただ少し休憩していただけだ」

「あの~……これ、……よかったら、召し上がってください」
彼女は手にしていた上品な布で包まれた物体を差し出した。
「ほう。これは何かな?」
「あの、おせち料理です。……もしかして、理事長はお夕食まだじゃないのかなって思いまして」

私は一つ大きな息をついた。
「……ご明察だ。で、なにかね。君は、わざわざそれをお家から私のために届けに来てくれた、ということなのかな」
「ええ、まあ」
彼女は照れくさそうに笑ったあと、小さな声で独りごちた。
「……それだけじゃ、ないんですけどね」

「せっかくの心づくしだ。ありがたく頂戴するとしよう」
私は絹織物の風呂敷をほどくと、小さな一人前用の重箱を開けた。
黒を基調にしたシックで重厚な造りのものだ。
「君は、夕飯はもう済ませたのかね?」
「ええ、私はいいんです。……待っててくださいね、今、お茶を淹れてきますから」

新年早々、思わぬ客の来訪に私はついつい微笑を浮かべてしまった。
重箱の中には、とりどりの食材の御節料理が詰められている。
和食も魚料理も好きな私にとっては、ありがたいことこの上ない。
手作りらしき卵焼きは、きっと日野君自身が焼いたものだろうか。
優しい甘みと、口の中にふわりと広がる柔らかな食感が、疲労の蓄積した身体に染み渡るようだ。

間もなく、日野君がテーブルに桜茶を持ってきてくれた。
それも桜の花とともに、金粉が浮かんでいる。
「ほう……これは。金粉入りの桜茶か。なるほど、新年の祝い事には相応しいものだね」
私は感心し、彼女の心配りに目を細めていた。
「それから、もう一つ。……理事長、お誕生日おめでとうございます」

にこにこと微笑む彼女の口から祝いの言葉が出た。
一瞬、本気で自分の誕生日だということを失念していた。
「……ありがとう。君にそう言われるまでは、自分の誕生日だということさえ忘れていたよ」

「本当ですか?」
誕生日を忘れたと宣う私に驚いたのか、彼女の声音が高くなる。

「……あ、お節、あらかた食べ終わったんですね。……どうでした?」
「ああ、おいしかったよ。ありがとう。……ところで、卵焼きなんだが。もしかしなくても、君が焼いてくれたものだったのかな?」
日野君の顔に、たちまち赤みが射す。
本当に、この少女は隠し事などできないのだな。
私はある意味感心しつつ、彼女の表情の変化を眺めていた。
「……はい。そうです。……どうしてわかったんですか?」

「強いて言うなら、勘だとしか言いようがないな。味が、すぐに君を連想させたのだ……と言えばいいんだろうかね」

「――あの。お食事も終わったところですし。私から、もう二つプレゼントをさせてください」彼女が立ち上がると、足元に置いたヴァイオリンケースに手を伸ばした。
――二つ?
二つとはなんだろう。
ひとつは演奏だろうが、もう一つは……

やがて、彼女の手による甘く優しい響きの「ハッピーバースデー」が奏でられた。
あまりにも有名な短い曲を、こうして私のためだけに弾いてくれるとは。
その演奏にこめられた気持ちが痛いほど伝わってくる。
――告げてはならない、禁忌の言葉。
二人のこれまでの関係を瓦解させてしまいかねない、そのひとこと。

「……ありがとう」
私は軽く拍手をすると、上気した彼女の顔を見やった。
「そうだ。えっと、その。最後に、もう一つプレゼントが」
「まだあるのかね?……これだけでも、私には分に過ぎた祝いだと思うんだが」
私は苦笑しつつ彼女の背中を見ていると、小さな箱が手渡された。
「気に入って戴けるといいんですが……」
「開けて見てもいいかね?」
「どうぞ」

そこには、私の愛車のメーカーのキーリングが入っていた。
決して安価なものではないはずだが、さて、どうしたものだろう。
「車とお揃いか。……ありがとう。有効に使わせてもらうよ」
彼女はほっとしたように私の手元を見つめている。

「もう夜も遅い。……君のお家まで送っていくよ。早速キーリングの出番が来たようだ」
その私の言葉に、彼女はあからさまに落胆した表情を浮かべた。

「食事を戴いて、満腹になったら眠気が差してきた。私もこれで仕事は切り上げて、家に帰るとするよ。明日からは年始参りであちこちに挨拶に出向かなければならないしね」
「……そうですか。……じゃあ、今夜はゆっくり休んでくださいね」

理事長室の照明を落とし、鍵をかける。

駐車場へ向かって歩くが、今夜はさほど寒くはなかった。
車に乗り込んで……夜のドライブと洒落込みたいところだが、それにしてはもう時間が遅すぎる。
残念ながら、ドライブは次回に延期するしかなさそうだ。

「いつからお仕事されてたんですか?」
「単に書類だけなら、元旦からだね」
「ええっ、元旦からですか?学院に出向いて?」
「昨今は、個人情報の保護だのなんだのとうるさいご時勢だからね。迂闊に書類を自宅に持ち帰ることもままならないんだよ。だから、必然的に学院に赴いて仕事を片付けねばならないことになっているんだ」
「……大変ですね……」

「ま、世の中見渡してみれば、元日から働く人々はかなり多いと思わないかね?鉄道等の交通機関、輸送業、神社仏閣等。デパートも当たり前のように開いているし、飲食を扱う店、コンビニやスーパー。元日から働かねばならない職務の人間も決して少なくはない」

「……無理は、しないでくださいね」
日野君が、真剣な顔つきで私を見つめる。
「世の中がそうだからって……理事長がお忙しいのはわかりますが。……今日だって疲れてらしたみたいで……」
「心配しなくとも、適宜休憩は入れているよ。それに、今日は君に誕生日祝いをして貰えるという思わぬ出来事にも遭遇したしね。……いい休息と、気分転換ができた。働きづめでいるのも、悪い事ばかりではないな」

「絶対、今日も理事長室にいると思ってました」
ぽつりと日野君が呟く。

「……でも、よかったです。今日、理事長のお誕生日に逢えて、お祝いできて」
「ああ、そういえば……重箱はどうしたかな。君に返さなければ」
「そうですね。――そしたら、来年も作ってお持ちできますね」
私はゆっくりと首を振る。
「……いや。あれは一人前用だったろう?来年は、君と二人分を、一緒に分け合いたいものだね」
「……えっ」

日野君の身体が、一瞬固まったようだ。

「そして、また――」
来年も、こうして誕生日を祝ってもらえたなら。
日野家の門前に車を停めつつ、胸の裡で独り呟く。

「ああ、お宅に着いたよ」
「あの。またって、なんですか?」
日野君は言いかけて中途で切った私に食い下がってくる。
「いや。今度は、私が君の誕生日に何を贈ろうかとね」
私は微笑むと、彼女はそれ以上の言葉を発せられなくなったようだ。

「おやすみ」

私は軽く手を振ると、どこか弾んだ心持のまま車を発進させた。
酒を飲んだ訳でもないのに、身体の芯から温まるような、そんな心地よさが身体を満たしていた。

(おわり)


やっとのことでひねり出した、理事長様のお誕生日のお話です。

次はこれを香穂子ちゃん視点から読みたい人、拍手をポチッと押してください(*^_^*)


理事長~!ゆ・ず・風呂!!
使えよな!!!!!使うよね!!脱ぐよねっ!!!ねっ!!!

拍手[11回]

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コメント
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>とりあえずさん
あけましておめでとうございます♪新春初拍手コメントありがとうございます~!
いつも励まされて、更新の意欲になっています♪
理事長様の追加、今月こそは来るものだと信じて必死に楽譜を溜め込んだままです(^^ゞ
理事長様の素敵な一年の幕開けは、もー、今までで1・2を争う凄いシチュエーションからですた( ̄ー ̄)
手料理が何故、香穂子ちゃんが作ったものだとわかったのか?それは愛の力ということで♪
前回の恋人未満の100コルに準拠した状況が好評なのと、自分でもエロエロ展開はパスでやるとして
こういう恋愛初期の状態がいいなあと思って書きました♪
yukapi URL 2016/01/05(Tue)20:24:52 編集
>tokieさん
あけましておめでとうございます♪コメントありがとうございます!
あらまあ、tokieさんも年末年始に
お仕事でしたか…大変でしたね(^_^;)お疲れ様です
そういや、第一段階は肝心の理事長様のお姿がないというトンデモな導入部でしたね(^_^;)
慰安旅行の発案者様でスポンサー様なのに!
マンガはっすね…第二段階のネタバレ含んでますが、理事長様の殆ど全裸が出てきますので(ぎゃー)
閲覧場所には要・注意でございます!!電車内では、執筆者の私でも閲覧不可能です(@_@;)
描くのにも非常に注意を払っております(*´д`*)なんせ今回は香穂子ちゃんまで脱ry
yukapi URL 2016/01/05(Tue)20:30:53 編集
>ゆかりさん
あけましておめでとうございます♪おおおゆかりさんはもう理事長様見られましたか!
じゃあエロエロマンガも大丈夫ですね( ̄ー ̄)ニヤリ

香穂子ちゃんが攻め状態の現状ですが…すごいな、ゆかりさんの推理バッチリで次は当然下半身も
攻めていくところです( ̄ー ̄)ニヤリ でも予測はつきますよね~♪
この温泉イベのお話、妖しい妄想が止まらなくなって困っています(^_^;)
温泉マンガではまだまだまだ甘い描写に留めてますが…もっともっとエロくて官能的なお話に
いくらでも持っていけそうで、妄想が止まらない状態です~!
yukapi URL 2016/01/05(Tue)20:35:36 編集
プロフィール
HN:
yukapi
性別:
女性
職業:
イラストレーターみたいなもの 自営
趣味:
読書。絵を描くこと、文章を書くこと。
自己紹介:





なんだかいろいろと絵や漫画を執筆中。…吉羅理事長勝手ノベライズ+捏造小説他公開中.理事長ゆず風呂漫画3完成して一応完結しましたw





100万人の~をベースに現在の時系列で勝手ノベライズ&完全空想エロありエピソードを書いています。時に微エロ・ハードエロありですのでご注意を!







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