Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」をベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載していました。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや勝手に楽譜イベ内容を補完した妄想小説を掲載中。R18小説・HコミックをDLSITEでダウンロード販売中。イラストや漫画も無料掲載中♪一部パスワードあり
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(通常楽章開始前、吉羅理事長登場の場面です)
「――そこで、何をしているんだね?」
香穂子が森の広場でヴァイオリンケースを手にしていると、誰何される声に振り向いた。
そこには見たことのない長身の男性が佇んでいた。
見るからに仕立てのよさそうなダークスーツを身に着けている立ち姿は一分の隙もなく、嫌味ほど決まっている。
端正な顔立ちは、おそらくまだ若い。見たところ30歳前後といった辺りだろう。
茫洋とした風貌の音楽教師の金澤よりも、少しばかり歳は若そうに見える。
香穂子に話しかけるこの男こそ一体何者だろうか?
薄暗い時間帯に、背後から若い男性に声をかけられたことで、香穂子は警戒心で身体を硬くする。
身を守るようにヴァイオリンケースを胸の前に抱えた。
「あの……失礼ですが、……どなたですか?」
「ああ。そうか、君から見れば、私の方こそ不審に思われるかもしれないね」
男の持って回った口調に、香穂子は僅かに苛立ちを感じた。
「その制服は、普通科の生徒だね。だがしかし、ヴァイオリンケースを持っている。――差し詰め選択教科が音楽や、あるいは音楽関係の部活の生徒といったところか?」
制服で普通科と見破られ、ケースがヴァイオリンのものだと知っているということは、少なくとも学院のことを知らないまま侵入してきた不審者というわけではなさそうだ。
「私は吉羅暁彦という。ファータ……アルジェント・リリをはじめとする羽のある連中とは、いささか因縁のある身でね」
思いもよらないことを聞かされて、香穂子は驚きで訊き返した。
「ファータ……リリのことを、ご存知なんですか?」
「ご存知というか、連中とは腐れ縁とでもいうのかね。これからは、時々こうして私を見かけることもあるだろう。別段、怪しいものではないと見知り置いてくれたまえ」
「……失礼ですが、吉羅さん、あなたは教師には見えませんけど。じゃあ、どういった立場の方なんですか?」
疑問を素直に話すと、更なる驚愕の事実が彼の端正な口唇から発せられた。
「私はこの学院の理事長だ」
驚きで、香穂子は絶句する。
「正確に言うと、理事長になるのは、もうすぐ行われる次の理事会で正式に選任されてからになるがね。……これで得心がいったかね」
「既に、理事長になることが内定されているということですか」
「そういうことだね。あとは形式だけの会議だ。私を理事長に選任したという議事録を残さねばならないのでね。
……まったく、くだらない形式ばかりに拘泥して、実利を重んじようとはしない。それだから、ここまで斜陽となっても過去の栄光の残骸にすがっている。私は、そんなこの学院の体質改善を仰せ付かったというわけだ」
国語の得意な香穂子でも、吉羅の駆使する難解な表現がやっと理解できた。
尊大な、人を人とも思わぬ口調。
それもそのはずだ、学院の上層部の人間。
この男、吉羅暁彦は学院創立者の関係筋なわけだ。
なんでも、創立者は結構な資産家の家柄らしいと噂で聞いていた。
「では、失礼。君も遅くならないうち、早く帰ることだ」
軽く踵を返して歩き去る吉羅の後姿を、魅入られたように見つめてしまう香穂子だった。
「――そこで、何をしているんだね?」
香穂子が森の広場でヴァイオリンケースを手にしていると、誰何される声に振り向いた。
そこには見たことのない長身の男性が佇んでいた。
見るからに仕立てのよさそうなダークスーツを身に着けている立ち姿は一分の隙もなく、嫌味ほど決まっている。
端正な顔立ちは、おそらくまだ若い。見たところ30歳前後といった辺りだろう。
茫洋とした風貌の音楽教師の金澤よりも、少しばかり歳は若そうに見える。
香穂子に話しかけるこの男こそ一体何者だろうか?
薄暗い時間帯に、背後から若い男性に声をかけられたことで、香穂子は警戒心で身体を硬くする。
身を守るようにヴァイオリンケースを胸の前に抱えた。
「あの……失礼ですが、……どなたですか?」
「ああ。そうか、君から見れば、私の方こそ不審に思われるかもしれないね」
男の持って回った口調に、香穂子は僅かに苛立ちを感じた。
「その制服は、普通科の生徒だね。だがしかし、ヴァイオリンケースを持っている。――差し詰め選択教科が音楽や、あるいは音楽関係の部活の生徒といったところか?」
制服で普通科と見破られ、ケースがヴァイオリンのものだと知っているということは、少なくとも学院のことを知らないまま侵入してきた不審者というわけではなさそうだ。
「私は吉羅暁彦という。ファータ……アルジェント・リリをはじめとする羽のある連中とは、いささか因縁のある身でね」
思いもよらないことを聞かされて、香穂子は驚きで訊き返した。
「ファータ……リリのことを、ご存知なんですか?」
「ご存知というか、連中とは腐れ縁とでもいうのかね。これからは、時々こうして私を見かけることもあるだろう。別段、怪しいものではないと見知り置いてくれたまえ」
「……失礼ですが、吉羅さん、あなたは教師には見えませんけど。じゃあ、どういった立場の方なんですか?」
疑問を素直に話すと、更なる驚愕の事実が彼の端正な口唇から発せられた。
「私はこの学院の理事長だ」
驚きで、香穂子は絶句する。
「正確に言うと、理事長になるのは、もうすぐ行われる次の理事会で正式に選任されてからになるがね。……これで得心がいったかね」
「既に、理事長になることが内定されているということですか」
「そういうことだね。あとは形式だけの会議だ。私を理事長に選任したという議事録を残さねばならないのでね。
……まったく、くだらない形式ばかりに拘泥して、実利を重んじようとはしない。それだから、ここまで斜陽となっても過去の栄光の残骸にすがっている。私は、そんなこの学院の体質改善を仰せ付かったというわけだ」
国語の得意な香穂子でも、吉羅の駆使する難解な表現がやっと理解できた。
尊大な、人を人とも思わぬ口調。
それもそのはずだ、学院の上層部の人間。
この男、吉羅暁彦は学院創立者の関係筋なわけだ。
なんでも、創立者は結構な資産家の家柄らしいと噂で聞いていた。
「では、失礼。君も遅くならないうち、早く帰ることだ」
軽く踵を返して歩き去る吉羅の後姿を、魅入られたように見つめてしまう香穂子だった。
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プロフィール
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yukapi
性別:
女性
職業:
医療関係
趣味:
読書。絵を描くこと、文章を書くこと。
自己紹介:
なんだかいろいろと絵や漫画を執筆中。…吉羅理事長勝手ノベライズ+捏造小説他公開中.理事長ゆず風呂漫画3完成して一応完結しましたw
なんだかいろいろと絵や漫画を執筆中。…吉羅理事長勝手ノベライズ+捏造小説他公開中.理事長ゆず風呂漫画3完成して一応完結しましたw