Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」、漫画金色のコルダ、Vitaのゲームをベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載しています。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや、オクターヴの補完テキスト、パロディマンガ無料掲載中。一部パスワードあり
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今ちょっと手を傷めてまして、途中までしか書けてませんが
――肩に触れられた吉羅の手が、やけに温かく感じる。
(続く)
――肩に触れられた吉羅の手が、やけに温かく感じる。
普段のやや素っ気ない態度に比べて、明らかに軟化しているのは確実だった。
二人の間だけで、婚約者としての誓いを交わしたのだが……
「今年は、君も卒業か。進路はどうするべきか、考えてはいるのかね?」
なんだかやたらリアルな話になってしまった。
「え、一応は……。でも、学生結婚は避けるべき、でしょうかね……やっぱり」
二人で暮らしたいという想いは強い。
できるなら早いうちに。
「別に、そんなことは気にしてはいないよ。これは君と私との間で決めればいいことだからね」
「え、でも……まずくはないんですか、星奏学院理事長として、対外的な評判とか……」
「それを言うなら、既に在学中の君と交際している時点でアウトか。ああ、一応は二十歳を過ぎた成人としての君と交際しているのだから、まあいいのではないかな」
からかっているのかふざけているのか、吉羅は唇の端にうっすらと笑みを浮かべている。
「まったく、実在の我が学院を舞台にして、生徒や教師などの人物たちをゲームにして、キャラクターとの恋愛ゲームに仕立てようとはね。まあ、前理事長や校長たちが既に了承しているプロジェクトとはいえ、よくもまあこんな大胆な企画を了承したものだと思うよ」
吉羅は整った眉を少し顰めた。
「それだけ、学院運営が危機的な状況にあったというわけだが。……ま、伝承とされている妖精が絡むフィクションという体裁を取っていて幸いだったな。
しかし、一時期とはいえ、何故か私の人気が高まって、追加キャラクターとして攻略対象になってしまったのは参ったよ。余計な詮索等をされたくないので、一切の取材を拒否させてもらったがね」
しかし、一時期とはいえ、何故か私の人気が高まって、追加キャラクターとして攻略対象になってしまったのは参ったよ。余計な詮索等をされたくないので、一切の取材を拒否させてもらったがね」
そのお陰で、二人は外での逢引すらもままならず、理事長室において、あるいは吉羅宅でのデートをひっそりと行うに留めなくてはならなくなったのだが……。
「……ね、理事長は、月森くんとのエンドを見てどう思います?」
大学生編の最終8巻の該当ページを広げた香穂子は、それを吉羅の掌に強引に押しつけた。
吉羅は渋面を作りつつ、パラパラと紙面を捲った。
「……トースターで、トーストすら焦がすというのは、いくらなんでも月森くんの生活能力を侮っているとしか思えないな。まさか、これが事実と信じる向きは少ないと思いたいものだが」
あらら?
意外な感想がこぼされたものだ。
れ、恋愛面は?
私と月森くんがこんな風に恋人として描かれて、嫌じゃなかったんですか?
思わず吉羅を見上げて、少し頰を膨らませていると吉羅から不意に問いかけられた。
「君は、月森くんに手紙やら葉書やらを送っていたのかね?」
「いいえ」
香穂子はきっぱりと答えた。
「私は、そんな時間の余裕なんかありませんでしたから……」
誰かさんのおかげで。
「まあ、今時珍しい手書きの葉書や手紙をもらうというのは、心に響くだろうね。
インターネットの発達で、今すぐにでもメールやメッセンジャー、LINE、Teams、Slack……等で、即時繋がれる時代だ。
現代人は、さまざまな連絡ツールで縛られていると言っても過言ではないな」
インターネットの発達で、今すぐにでもメールやメッセンジャー、LINE、Teams、Slack……等で、即時繋がれる時代だ。
現代人は、さまざまな連絡ツールで縛られていると言っても過言ではないな」
吉羅は水平線に視線をやりつつ、ふう、と小さな溜息をひとつ吐いた。
「インスタントなやり取りよりも、そのように時間のかかるコミュニケーションも、味わい深いだろうな。それも悪くはないだろうね」
「理事長としてのお仕事のうち、こういうお休みの時にも連絡があったりするんじゃありません?」
「まあ、ないとは言わないが……今は、君と過ごす時間のほうが大事だからね。取るに足らない案件や、即時対応するに及ばない件などは後回しだよ」
改めて、目の前にいる男性は重責を負っている人なのだなと香穂子は思った。
吉羅の整った横顔は、理事長着任後とそう変わりはない。
高2で出会って、それから徐々に意識して。
気がついたら彼を好きになって、早くも5年が経過しようとしていた。
三十も半ばを過ぎようとしているが、見た目はそれよりも若く見える。
一回り以上も年下の女性と交際することで、若返ったと言われてしまいそうだ。
そう言って彼は笑った。
ゆるやかな春の大気の中、海風に吹かれながら、穏やかに話をする。
こんな日、こういう時間をともに凄せることが嬉しい。
吉羅お勧めの、海の見える高台のランチカフェに連れて行ってもらった。
雰囲気のあるイタリアンと和の創作料理のお店で、予約必須の穴場的存在でやっと入れたのだと、周囲の女性客が嬉しそうに話している。
(続く)
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