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Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」、漫画金色のコルダ、Vitaのゲームをベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載しています。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや、オクターヴの補完テキスト、パロディマンガ無料掲載中。一部パスワードあり
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暁彦くん(中身31歳)ですが、何故こんな状況になったのかはこれ以後に

先月まで多忙で、今月はダウンロードフェスのために体力温存でひきこもっております('ω')










「……暑いですね……」
強烈な陽光が容赦なく照りつけて来る。
この妖精の島にも四季があるのだが、ここ数日盛夏のような暑さに襲われていた。
それは、異世界からの来訪者である星奏学院一行が起こした歪みに起因した現象のようだが
ファータたちからはっきりとした指摘はなかった。
香穂子は練習を終えて、気分転換にかこつけたデートを誘い、暁彦少年を連れ出すことに成功した。
なにしろ今の暁彦少年は、ほっておくと延々と練習に没頭し続け、飲食すら忘れてヴァイオリン演奏に励んでいるありさまなのだ。
涼し気な顔をしてすましている暁彦少年だが、その引き締まった頬に一筋の汗が流れ、伝い落ちる。
「暑い暑いと言っても、状況は変わるまい」
「いえ、変わりますよ!ねえ、どこかのお店で涼みましょう。あ、そうだ!この前ケーキセットを食べ損ねたお洒落なカフェありましたよね?そこに行きましょうよ」
香穂子は強引に暁彦少年の腕をとり、目的地の方向に移動させるように引っ張った。
「そんなに力を入れなくとも、私は逃げないから。日野くん、力をゆるめてくれないか」
やや呆れたように眉根を寄せている吉羅少年は、スラックスのポケットを探っている。
その仕草が何をしようとしているのか察した香穂子は、咄嗟に彼の頬の汗をタオルハンカチで拭った。
「あっ」
何故か暁彦少年の声がうわずっている。
そのまま無言で、足を早めてカフェへ向かう彼を香穂子はやや小走りに追っていった。
カフェの中は冷房が効いていて、ひんやりとした空気がとても心地よかった。
「ああ……生き返るう~~」
「ぼくはアイスコーヒーにするが、日野くんは何がいいんだね?」
「あ、私はコーヒーフロートにします」
ほっとして香穂子は暁彦少年を見つめ、ニコニコと微笑んだ。
「……そういえば。さっきは汗を拭ってもらった件、なんだが……」
なになに?
お礼でも言ってくれるのかな?
そんな風に心を浮き立たせた彼女を、彼の思いもよらない言葉が待っていた。
「……君は、親しい男子生徒が汗をかいていたら、さっきのようにハンカチで拭ってあげるのかね?」
「はあっ?!」
香穂子は素っ頓狂な声をあげてしまった。
「そんなわけないじゃないですか!……さっきは、吉羅くんが……汗かいててハンカチ探してる様子だったから。だから、つい咄嗟に」
「……そうか」
暁彦少年はばつが悪そうに視線をさまよわせて、黙り込んでいた。
「お待たせしました」
暁彦少年の前にアイスコーヒー、香穂子の前にコーヒーフロートが置かれた。
「……汗を拭ってくれるのはありがたいが、そういう時は……その。不意打ちにするんじゃなく断ってくれないか?」
「……え?つまり……拭いてあげる!って言うとか……ですか?」
だって、そんなことを言おうものなら、嫌がられて避けられたりしそうだから。
「『結構だ』とか言われて、させてくれないんじゃないかと思って」
「大人の私なら、生徒である君から汗を拭かれたらかなりな抵抗を感じるだろうな。ただ、今の僕なら……そういったことも、悪くはないなと思っただけだ」
ちょっとは素直になってみる、ということだろうか。
それにしても、暁彦少年はどことなく頬が上気しているように見えるのは気のせいだろうか?


「大人の私よりも、この体は新陳代謝が激しいようだ。まあそれも当然だな、成長期のまっただ中にいるわけだから。……だからなのか、こうも暑くては汗もたくさん出るわけか」
自分に言い聞かせるように、彼は俯いて呟いていた。
「……あ、そういえば。吉羅さん……じゃなくて吉羅くん、BPコイン持ってるの?」
「持っていなかったら、ここへは入らないさ。無銭飲食になってしまうじゃないか。ま、もっともこの店の中で演奏をしてコイン稼ぎもやぶさかではないが」
ストローをくわえて、一気に冷えたコーヒーを飲む。
汗で失われた水分を取り戻す勢いで、二人はそれぞれに飲み始めた。
ちらっと上目遣いで香穂子は暁彦少年を窺った。
そういえば、理事長がホットじゃなくてアイスコーヒー飲んでるのって、珍しいな。
少年の姿をしている彼がアイスコーヒーを飲んでいるという姿は、とてもレアな場面じゃないだろうか?
写真でも撮っておきたいなあ。
あっというまに空っぽになったグラスを置いて、暁彦少年は満足げに息をついた。
「足ります?それだけで」
暁彦は暫し考えていた。
「いや……これはなかなかうまいから、もう一杯追加を頼もうかと思ったところだ」
香穂子はコーヒーフロートのアイス部分を、コーヒーの液体と混ぜ合わせていた。
それをスプーンですくい、彼の前に差し出してみた。
「おいしいですよ、これ。ひと口いかがですか?」
断る、とか要らないとか無下に言われるかな。
だが彼の行動は彼女の予測を裏切り、まったくの無抵抗でそのスプーンを口に入れた。
バニラアイスとコーヒーの溶け合った、絶妙なおいしさのハーモニーを味わえるところだ。
彼の口が味を確かめるように幾度か蠢き、そしてまだ未発達な喉仏が動いた。


「……うん。悪くはないな。いや、素直に言ってしまおう。……君のくれたものだからか、うまいな」
整った薄い唇が笑いを形作った。
「君とぼくとは、仮想世界での仮想の恋人同士というわけだ。かりそめとはいえ、我々が過ごしているこの時間は恋人としてのものだな?」
……いつからそういう認識になったのだろう?
それにしてもこの男……いや、この少年、ノリノリである。
体が若返り、ついでに気分も若返ったどころか、何か肝心な部分が少しずつ緩み始めているように思えた。
きっと高校時代の吉羅は、生真面目一辺倒の融通のきかない優等生で、女の子など寄せつけないのかと密かに想像していた。
でも実際には30歳を過ぎ、こなれた大人の精神が混じっているせいだろうか、状況を楽しむ余裕が見て取れる。
この期間がいつまでとも知れない。
夢のようなものと割り切って、楽しく過ごそうと開き直るのもいい。
そう考えているのだろうか。
香穂子はもくもくとコーヒーフロートの残りを食べ、暁彦少年は二杯目のアイスコーヒーにとりかかっている。
「なんだか、ホットコーヒー以外のものを飲んでいる理事長って……あまり見ないから、新鮮です」
ふっ、と鼻先で笑われた。
「それは、君が淹れてくれたコーヒーが欲しいところだが、そうもいかないからね」
カラン、と透き通った氷の音がする。
「前にしたコーヒーの話を、君は覚えているかな?」
「え?」
「コーヒー・カンタータの話だったな。私の好物がコーヒーだから、手っ取り早く私の機嫌取りをしたければ、コーヒーをくれと。そんなことを言ったな」
「…………」
いいえ、それだけじゃありませんよ。
そう言いたかったがぐっとこらえた。
一杯のコーヒーは千のキスと同じ。
その時点で、いちいち数えてはいないが、何十杯もコーヒーを淹れてあげたはずだ。
「数えてみるかね?」
そんな意地悪なことを言われた。
そして、こうも言われた。
「今は、コーヒーを淹れてもらう以上のことは望んではいない」とも。
微妙な笑みを湛えながら、香穂子が呟く。
「……じゃあ、戻ったらコーヒーを淹れますね」
「いや、その必要はない」
やけにはっきりとした声で告げられ、香穂子は戸惑った。
「そんなに焦って戻らなくとも、今はもう少し……もうしばらく、この幻のような世界で……ここでしか体験できないことを、味わい尽くしたいなと。そう思ったんだ」
やや大きな、濃く深い赤茶色の瞳がまっすぐに自分に向けられる。
改めて見ると、暁彦少年の顔立ちは本当によく整っている。
大人の体つきから比べると、三まわりほども小さくなっているだろうか。
小柄な美少年の強い瞳に吸い込まれそうな気分になる。
――この年頃の彼と恋愛関係にいられたら、どんなことになるんだろう。
三十路の部分と高校生当時の感情が入り乱れるらしいのだが、本人もそれを制御できずに困惑している状況だった。
先が見えないスリリングな状況での恋はどうなるのか、まったく予測がつかなかった。

(続きます)

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コメント
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>ミコトさんへ
お久しぶりです!ちょっとレイアウトとか文章を若干修正しました
夏の少年暁彦くんとの恋愛、健全も不健全も両方ごっそり浮かんでしまいます…
さっきまで別挿絵も描いてたんですが、ベイスターズ戦のTV観戦で中断しています
思わせぶりな大人の素振りも混ざりつつ、どっか挙動が少年ぽい
そういうところを目指してますが、暁彦くんには頑張ってもらいたいです!
yukapi 2022/08/10(Wed)18:37:36 編集
プロフィール
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yukapi
性別:
女性
職業:
派遣社員だけどフルタイム 仕事キツい
趣味:
読書。絵を描くこと、文章を書くこと。
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