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Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」、漫画金色のコルダ、Vitaのゲームをベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載しています。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや、オクターヴの補完テキスト、パロディマンガ無料掲載中。一部パスワードあり
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――吉羅が理事長として就任後、少しして行われた「進学に関する特別講話」。
校長と副校長、そして理事長の吉羅とが昨今の進学状況や、進路の状況を踏まえて、高等部の生徒たちに訓示を垂れる機会でもあった。

副校長、校長らが手許の資料を見て星奏学院大への進学や、他大学への進学などの状況、そしてその先の就職への道筋などを話していた。
生徒たちにも資料は配布されているが、正直生徒にとっては退屈な内容でしかないのは至極当然だったかもしれない。
資料を見ながら、その中身を読み上げるだけの進行に、次第に不満を露わにする生徒が出現し始めた。


校長が終盤まで話したところで、普通科の生徒の一部……男子がふざけたり、騒いだり、挙句は寝たりする者も見られるようになってしまった。
そんな講堂内の生徒を、まだ順番が巡って来てはいない吉羅がだいぶ苛々した様子で、眉間に皺を寄せて不機嫌な様子を隠そうともせずに眺めていた。
司会の教師から「次は、吉羅理事長のお話です」と紹介があり、壇上に向かった吉羅は足早にマイクへと歩み寄った。
まばらに拍手が湧き、明らかに開始時点よりもだらけた雰囲気が漂っていた。


「さっきから、生徒の様子を見させてもらっていれば――到底、人の話を聞く態度ではない者がいるようだ」
低いがよく通る声で話す吉羅のマイク越しの声には、強い苛立ちがこもっていた。
「そこ、真ん中列の前から十番目の普通科男子。寝ているのなら起きるか、話を聞く気がないなら、今すぐ出て行くかしたまえ」
吉羅の指摘に、他の生徒や教師からの注視が一斉にその箇所を向く。
「それから、普通科の三年生男子複数。騒いで邪魔をするのなら出て行け!」
鋭い叱責の声音に、それまでざわついていた講堂内の空気がピンと張り詰めたものへと変わった。


「これしきの時間、教師からの話さえまともに聞く忍耐力もないのなら、受験だ就職だなどという長期スパンの試練にも到底耐えられまい?嫌なら出て行きたまえ。話を聞く気があるのなら、静かにしていること。幼稚園児でもわかる道理だ。君らはそれ以下か?」
しんと静まり返った講堂内に、よく通る吉羅の声だけが響き渡る。
彼の鋭い視線が生徒の群れを睥睨し、静寂のただ中にあることを確認し終えると話を続けた。
「――手許の資料を参考にして欲しい。星奏学院大への進学率、あるいはその先の就職への道筋について――」



通り一遍の、およそ一時間ほどの時間が過ぎると、生徒たちの間では「あの理事長怖い」という評判でもちきりになった。
「こないだ理事長になったばっかなんだよね?」
「だよ。若くてイケメンだと思ってたら、怖い怖い。出て行け!なんて言われた時、もうションベンちびりそうになったよ」
「あそこまで言える先生がいないってのが情けないんだよ」
「だよね。実際うるさかったし」

「理事長の言ってることは正論だけどさあ、内容がくっそつまんねえんだっつーの」
「だよなー、貰った資料読めばわかることだけで、いちいち講堂に集めんなってことだよ」


当然、その集会には二年生も出席していたわけだった。
「うひゃー、今度の新しい理事長、怖いね!気合入りすぎ」
天羽がなんだか面白がっている風に話していた。
「前の理事長って、誰かわかんないくらい存在感なかったじゃん?今度インタビュー行かなきゃいけないけど、怒鳴られないように気をつけなくちゃね」



――香穂子が覚えている吉羅の記憶で、二番目に古いのがこの特別講話だった。
初対面の時には彼はまだ理事で、これから理事長就任が内定しているのだと言っていた。
皆が盛んに吉羅を怖がっていたが、人が話をしているのにそれを妨害するかのように騒いでいた連中が一番悪いに決まっている。
吉羅の憤りと叱責は当然の成り行きで、それくらい厳しく叱りつけてやらないと、物の道理もわからない馬鹿者が存在しているということ自体がおかしい。

香穂子はそう考えていたのを覚えている。


――そこから、新しく就任した若い理事長=怖い、という印象が定着してしまった。
若くて美形だが、冷徹で厳しいという噂が広がり、生徒だけでなく職員や一部の教師も吉羅を恐れている素振りがあった。


怖くて厳しいだけの人じゃないし、取り付く島もないような冷たい人でもない。
でも、それを知っているのは自分だけでいい。
香穂子だけが彼の優しい微笑や眼差しを享受することができる、特別な存在でありたい。
できるのなら、この先もずっと――

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