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Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」、漫画金色のコルダ、Vitaのゲームをベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載しています。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや、オクターヴの補完テキスト、パロディマンガ無料掲載中。一部パスワードあり
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「――えっ?僕が?新入生代表?」
僕はそれまで読んでいた本を脇に置き、姉に向き直った。
「そう。暁彦が入試得点でトップだったんですってよ。すごいじゃない」
姉は嬉しそうにニコニコと、穏やかな笑みを浮かべて僕を見ている。

僕はと言うと――彼女とは対照的に、苦虫を噛み潰したような表情をしているだろう。
「で……それって、僕にあれか。なんか読み上げる役をやれってことだよね?勿論、文書は学校側で用意してくれるんだろうね?」
姉は笑いながら首を振った。

「は?僕が自分で考えろっての?」
「ううん。暁彦が一から作れって意味じゃなくて、これ。これを参考例にして、少しアレンジを加えて欲しいんですってよ」
姉は書類の束を僕に向かって差し出した。
薄いパンフレットなのだが、幾つも積み重なったそれは、過去五年ほどの新入生代表が読み上げた「入学の言葉」とやらだ。
それから、二冊ほどの小さな書籍も手渡された。
新入生代表文例集と題されているそれらを見て、僕は心底からげんなりした。

「もう決まりなのかよ……」
僕は不満を露わにして独りごちた。
「ごめんね。暁彦に直接頼んだら、あなた叔父さんと口喧嘩になっちゃいそうだから。それで……」
「で?だからって僕を迂回して、姉さんをクッションと伝書鳩代わりに使ったっての?……ふざけてるよ」
僕は吐き捨てるように言った。

「ねえ、暁彦がこういうの気が進まないのはわかるけど。でもね、なんと言ってもあなたは身内でしょう?素性も知らないような新一年の子に、いきなり頼み込むよりずっといいはずなのよ。叔父さんだって新年度で大変みたいなの。協力してあげてよ、ね」
姉が困ったように僕の顔をじっと見つめる。
……僕は、この優しいお人好しの姉の懇願に弱い。
とても弱い。
いつだって損得の勘定もせず、ニコニコと笑って、人の嫌がる役割や面倒事を引き受ける。
僕には到底真似できやしない。

「……わかったよ。で、これ……文例練り上げて、チェックされるんだろ?いつまでにやればいいの?」
「一週間以内ですって。あの、私も協力するから何か困ったら相談してね」
「……はいはい。姉さんも大変だね」


姉は僕の部屋から出て行った。
僕が今度入学することになった星奏学院は、その昔僕の曽祖父が創設した、音楽科と普通科の並立する学校だ。
高等部と大学部、それから大学院までが建ち並ぶ広大なキャンパスは、緑豊かな立地を活かし、西洋建築の重厚さと意匠を凝らしたモダンな建物が特徴だ。
そこの音楽科を受けて、見事合格を果たした訳だが。
まさか自分が入試で首席を獲るなどとは思ってもいなかった。

姉は音楽科に在学中で、今度三年生になる。
叔父が校長をしているのだが、その姉に頼み込んで、僕に新入生代表の文章を読み上げさせるように仕向けるとは。
僕に直接依頼が来たなら……僕は面倒がってその場で即座に断り、入試得点二位の生徒に、この有り難くも栄誉ある使命を譲渡すると宣言しただろう。
精一杯の皮肉をこめて。

世襲と、親族経営の悪しき部分を凝集したようなものだ。
僕が口答で断ったところで断りきれず、身内の情を訴えかけてきて、最終的には引き受けざるを得ないようにされるに違いない。


――待てよ。
僕は一つの疑念が思い浮かんだ。
実は僕が成績トップなのではなくて、甥の僕に新入生代表を押し付けたい校長、つまりは僕の叔父の策略なのではないかと思ったのだ。
入試の点数は、通常は非公開のはずだ。
だが、僕にはそれを知る権利がある。
僕の入試の答案を見せてくれと叔父に要請し、拒否されたら嘘と思っていいだろう。

僕はあれこれと草案を練りながら、早速叔父への面会の約束を取り付けた。
僕が電話で文例ができたと言ったら、かなり驚いていて、明日の午後に星奏学院の高等部に来るようにとのお達しだ。
どうせ、僕が勝手なことを言い出さないように牽制しようというつもりに違いない。
一筋縄ではいかない狸親爺。
叔父に対し、身内ながらこんな印象を持つことしかできない。
僕は文例集から適当に抜粋した文章を継ぎ接ぎにして、なんとかそれらしく体裁を整えた。
文章を読んだり書いたりする作業は得意中の得意だ。
こんなの一時間もあればすぐにできる。


だが、叔父のやり方が気に食わない。
僕に直接願い出るのではなくて、姉をお遣い係に使役したことが腹立たしく思えてならない。
このまま、叔父の思惑に唯々諾々として素直に乗ってやりたくない。
さて、どうしてやったものだろうか……?



(続く。暁彦君の日記スタイルです。いずれR18の高一暁彦→香穂子とリンクさせます!(`・ω・´))

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>tokieさん
小生意気な中学生の暁彦君!私も大好きです♪
きっと暁彦君は成績もいいだろうから、いきなり首席とったことにしてしまいました(*^_^*)
これくらいやりそうだもの…と思ってしまうのです。

四周年の記念楽譜、月森君と金やんがかっこいかったので保存用にしました!
あと理事長様は交換でげとした後に、あの記念セットが出たので買ってしまったのでダブりましたw
ほんと、なぜあれに楽譜イベつけてくれなかったんだ!!と思いますね。
販売用のやつにはそれくらい差をつけてもいいんじゃないかい?あれのおかげで記念楽譜の価値が底上げ
されてしまいましたね。私…無料で手に入れたのと、2500円のおまけ楽譜の理事長合計二枚。
気分は複雑です(´・ω・`)

暁彦君の2が既にできてるんですが…続きをどうぞお楽しみに( ̄ー ̄)
yukapi URL 2015/08/22(Sat)12:48:42 編集
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