Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」、漫画金色のコルダ、Vitaのゲームをベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載しています。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや、オクターヴの補完テキスト、パロディマンガ無料掲載中。一部パスワードあり
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「――本日はAB型の血液が不足しております!あと十名分、どうか皆様のお力添えをよろしくお願いいたします」
星奏学院の正門付近に停まった献血車の周囲では、日赤の職員らが拡声器やハンドマイクで
ひっきりなしに献血を呼びかけていた。
試験休み明けの土曜ではあるが、受験生向けの学校公開日であり説明会が開催されていて、平常授業が行われている。
受験生やその保護者、教育関係者らが校内のあちこちを見学してもいい日になっているので、
文化祭などと似たような開放的な賑わいを見せていた。
しかし、在校生の立場としては何かと落ち着かない。
以前吉羅にも言われたが、香穂子やコンクールメンバーの校内セレクションの様子や、香穂子が受賞を果たした学外のコンクールの様子などを収めたPRのDVDが上映されているらしい。
午前中の四コマ授業を終えて、香穂子は昼食は学校で摂った後に居残りで次のコンクール向けのレッスンに励むつもりでいた。
もうあと僅かに迫ったコンクールを控え、試験休み期間もずっと香穂子は自主登校とレッスンを続けていた。
昼食のパンを手にしてふと前庭に出ると、正門付近に献血車が停まっていてそこに献血希望者が並んでいた。
香穂子は自分もしてあげたいと思ったが、今は腕に損傷を負ったり、逆に献血した結果による貧血等で体調を崩す訳にはいかない。
見ていると、献血前の採血で献血に不適格だと言われている女子生徒が何人かいた。
「日野ちゃん!お昼のかわりにお菓子食べにきたの?」
天羽が不意に声をかけてきたが、意味がわからずに香穂子はきょとんとして彼女を見返した。
「えっ、なに?お菓子って?」
「知らないの?あれ見てみなよ」
献血者を呼ぶ人の付近にテーブルが置かれていて、袋菓子やスナック菓子がいっぱいに広げられている。
「献血すると、あれ貰えるんだよ。あと他に飲み物飲み放題?身体に負担かかるから、あとでそれ食べて元気取り戻してねって感じ?」
「へえ、そうだったんだ。知らなかった」
香穂子は感心してうなずくと、天羽は献血車をデジカメで撮影していた。
「でも日野ちゃんは献血なんてするわけにいかないよね。一週間はやっぱり体が本調子じゃなくなるしさ、人によってはこの場で気分悪くなることもあるらしいし」
「天羽ちゃんは?やったことあるの?」
「ん、あるよ。でも今は血が回復するまでやっちゃいけない期間なんだ。一回400ml採血するとね、四ヶ月くらい献血しちゃダメなの」
「へえ~、偉いね。それにさすがは報道部だね」
そこへ、吉羅が講堂で行われていた説明会から戻ってきたらしく、ちょうど香穂子たちが話しているところを通りがかった。
「あ、理事長!説明会終わりですか?」
「ああ、天羽君に日野君。そうだよ、たった今終わったところだ。君たちは何をしているんだね?」
「報道部の取材です」
「――本日は、AB型の血液が不足しております――」
拡声器の声が三人の会話を遮り、学院の外にも聞こえるほど響き渡った。
「あれっ、そういえば」
天羽は吉羅を見てはたと手を叩いた。
「理事長って、確か血液型はABでしたよね?報道部で取材した時そう言ってたような……」
「そうだが、それがどうかしたのかね?血液型占いでもしようとでも?あれは科学的な根拠などないし、あれほど馬鹿馬鹿しいものはないが」
吉羅の顔が不快感を露わにして険しくなっている。
「まったまた。占いなんて。この呼びかけ聞こえませんか、理事長?AB型が不足してるそうですよ」
「……それで?」
吉羅の表情は嫌悪でいっぱいというように歪められている。
ここまで露骨に嫌そうな顔を見せる彼は珍しいと、香穂子も彼の様子を見ていて思った。
「理事長体格いいし、献血してあげたらどうですか?400とか成分献血とか、喜ばれますよ。この前の老人施設に続き星奏学院の理事長が篤志家として、自ら身体を張ってボランティア!」
「――いい加減にしてくれないか、天羽君」
「え、理事長さん?この方がですか?」
日赤の職員らが驚いたように目を見張り、吉羅の方を向く。
「今日はあとどれくらい不足してるんですか?」
天羽の問いかけに職員が返す。
「ABがあと十人分ですね。AB型の方は、日本人のおよそ十人当たりに一人しかおられないので、とても貴重なんです。慢性的に不足している訳でして……」
数人の職員が、哀れっぽいような目ですがるようにして吉羅を見る。
彼は渋面を作ってただそこに立ち尽くしていたが、やがて深い息を吐いた。
「――了解しました。協力しましょう……」
「ありがとうございます!」
途端に職員は喜色満面といったように声を張り上げた。
半ば無理やりのようだが、彼は献血車に乗り込んで行った。
取材をしようとする天羽だが、さすがに中の様子を写真に撮るのはダメだと職員から丁重に断られていた。
あんなに不機嫌そうになっていたのに、吉羅は大丈夫だろうか……
香穂子はそこにいたかったが、献血終了までには小一時間ほどかかるらしいし、自分も空腹なので天羽と一緒に校舎内に戻った。
星奏学院の正門付近に停まった献血車の周囲では、日赤の職員らが拡声器やハンドマイクで
ひっきりなしに献血を呼びかけていた。
試験休み明けの土曜ではあるが、受験生向けの学校公開日であり説明会が開催されていて、平常授業が行われている。
受験生やその保護者、教育関係者らが校内のあちこちを見学してもいい日になっているので、
文化祭などと似たような開放的な賑わいを見せていた。
しかし、在校生の立場としては何かと落ち着かない。
以前吉羅にも言われたが、香穂子やコンクールメンバーの校内セレクションの様子や、香穂子が受賞を果たした学外のコンクールの様子などを収めたPRのDVDが上映されているらしい。
午前中の四コマ授業を終えて、香穂子は昼食は学校で摂った後に居残りで次のコンクール向けのレッスンに励むつもりでいた。
もうあと僅かに迫ったコンクールを控え、試験休み期間もずっと香穂子は自主登校とレッスンを続けていた。
昼食のパンを手にしてふと前庭に出ると、正門付近に献血車が停まっていてそこに献血希望者が並んでいた。
香穂子は自分もしてあげたいと思ったが、今は腕に損傷を負ったり、逆に献血した結果による貧血等で体調を崩す訳にはいかない。
見ていると、献血前の採血で献血に不適格だと言われている女子生徒が何人かいた。
「日野ちゃん!お昼のかわりにお菓子食べにきたの?」
天羽が不意に声をかけてきたが、意味がわからずに香穂子はきょとんとして彼女を見返した。
「えっ、なに?お菓子って?」
「知らないの?あれ見てみなよ」
献血者を呼ぶ人の付近にテーブルが置かれていて、袋菓子やスナック菓子がいっぱいに広げられている。
「献血すると、あれ貰えるんだよ。あと他に飲み物飲み放題?身体に負担かかるから、あとでそれ食べて元気取り戻してねって感じ?」
「へえ、そうだったんだ。知らなかった」
香穂子は感心してうなずくと、天羽は献血車をデジカメで撮影していた。
「でも日野ちゃんは献血なんてするわけにいかないよね。一週間はやっぱり体が本調子じゃなくなるしさ、人によってはこの場で気分悪くなることもあるらしいし」
「天羽ちゃんは?やったことあるの?」
「ん、あるよ。でも今は血が回復するまでやっちゃいけない期間なんだ。一回400ml採血するとね、四ヶ月くらい献血しちゃダメなの」
「へえ~、偉いね。それにさすがは報道部だね」
そこへ、吉羅が講堂で行われていた説明会から戻ってきたらしく、ちょうど香穂子たちが話しているところを通りがかった。
「あ、理事長!説明会終わりですか?」
「ああ、天羽君に日野君。そうだよ、たった今終わったところだ。君たちは何をしているんだね?」
「報道部の取材です」
「――本日は、AB型の血液が不足しております――」
拡声器の声が三人の会話を遮り、学院の外にも聞こえるほど響き渡った。
「あれっ、そういえば」
天羽は吉羅を見てはたと手を叩いた。
「理事長って、確か血液型はABでしたよね?報道部で取材した時そう言ってたような……」
「そうだが、それがどうかしたのかね?血液型占いでもしようとでも?あれは科学的な根拠などないし、あれほど馬鹿馬鹿しいものはないが」
吉羅の顔が不快感を露わにして険しくなっている。
「まったまた。占いなんて。この呼びかけ聞こえませんか、理事長?AB型が不足してるそうですよ」
「……それで?」
吉羅の表情は嫌悪でいっぱいというように歪められている。
ここまで露骨に嫌そうな顔を見せる彼は珍しいと、香穂子も彼の様子を見ていて思った。
「理事長体格いいし、献血してあげたらどうですか?400とか成分献血とか、喜ばれますよ。この前の老人施設に続き星奏学院の理事長が篤志家として、自ら身体を張ってボランティア!」
「――いい加減にしてくれないか、天羽君」
「え、理事長さん?この方がですか?」
日赤の職員らが驚いたように目を見張り、吉羅の方を向く。
「今日はあとどれくらい不足してるんですか?」
天羽の問いかけに職員が返す。
「ABがあと十人分ですね。AB型の方は、日本人のおよそ十人当たりに一人しかおられないので、とても貴重なんです。慢性的に不足している訳でして……」
数人の職員が、哀れっぽいような目ですがるようにして吉羅を見る。
彼は渋面を作ってただそこに立ち尽くしていたが、やがて深い息を吐いた。
「――了解しました。協力しましょう……」
「ありがとうございます!」
途端に職員は喜色満面といったように声を張り上げた。
半ば無理やりのようだが、彼は献血車に乗り込んで行った。
取材をしようとする天羽だが、さすがに中の様子を写真に撮るのはダメだと職員から丁重に断られていた。
あんなに不機嫌そうになっていたのに、吉羅は大丈夫だろうか……
香穂子はそこにいたかったが、献血終了までには小一時間ほどかかるらしいし、自分も空腹なので天羽と一緒に校舎内に戻った。
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