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Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」、漫画金色のコルダ、Vitaのゲームをベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載しています。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや、オクターヴの補完テキスト、パロディマンガ無料掲載中。一部パスワードあり
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吉羅と衛藤とともに、吉羅行きつけのジムへとやって来た――
「さあ、着いたよ。ここだ」
「へえ、結構立派なところじゃん」
吉羅の案内に従って広々とした明るく綺麗な館内を歩くと、衛藤もジムの設備に驚ききょろきょろと辺りを見回している。  
歩いていたり、マシンでのトレーニングに勤しむのは、おそらく吉羅とさして生活ぶりに変わりのなさそうな、多忙なビジネスマンなのだろう。
ここにいる中で最も歳若いのが、衛藤と香穂子なのには間違いがない。

「……っていうか、ビジネスマン風の客ばかり」
普段は物怖じしない衛藤が、あちこちを物珍しそうに眺めながら呟く言葉に吉羅が反応する。「どうした、桐也?気後れしているのかね?」
「別に、そういうわけじゃないけど……」
からかう口調で吉羅に言われた衛藤が、少々ムッとした様子で年上の従兄に反論する。
「なら、堂々としていたまえ。利用者のひとりとして、不自然でないように」
「そりゃ、暁彦さんはいつも通ってるから慣れてるだろうけどさ。ま、いいさ。来たからには満喫させてもらうよ」
「その意気だ。これを機会に度胸をつけるといい」

従兄弟同士の親密な会話が繰り返されて、香穂子は自分が話に入れずにいて、疎外感を覚え始めていた。

「将来君たちは、さまざまなステージに立つことになるだろうからね。ステージが立派だからといって気後れしていては、本来の演奏ができないだろう」
吉羅が香穂子と衛藤の二人に向かって諭すように話し始めた。
確かに、嘗て天才と謳われたヴァイオリニストだった吉羅は何度も大舞台に立ち、コンクールでの優勝経験も多数あるとリリが以前教えてくれた。
その彼の経験からくる言葉には説得力がある。
客層が立派で、施設が立派だからといって、縮こまっていては自分本来の姿でいられない。

「さて、では私は受付を済ませてくるから、暫く待っていたまえ」
吉羅が、慣れた様子でビジターとして参加する衛藤と香穂子の受付手続きを終えて戻ってきた。

「さあ、行こうか。私と日野君はプール、桐也はフィットネスルームでロードバイクだったね。桐也はひとりで大丈夫かな?」
「なに言ってんの、暁彦さん。子供じゃないんだからね、案内も付き添いも要らないよ」
「よろしい。では、後ほど待ち合わせ場所で。何かあったら係員に言付けるように」

衛藤とは別行動を取るようで、香穂子はほっとしてしまった。
この新調した水着は、吉羅のために香穂子が用意したものなので、できれば彼だけに一番に見て欲しいと思っていた。

更衣室に入り、真新しいセパレートの水着に着替えた。
着たあとでおかしなところはないか、ウエストやお腹のスカート部分も大丈夫か何度も鏡の前でチェックした。
胸元を寄せて、少しでも胸が大きく見えたらいいなどと考える。
脈拍が普段の倍近くにまで上がっているようで、運動してもいない今のうちからドキドキが止まらない。

これから吉羅に、水着姿を見られるんだ。
下着とそう変わりのない格好を、初めて彼の目に晒すことになる。
彼はどう思ってくれるだろうか。
それより、彼の肌を見られるのかと思うと、舞い上がりすぎておかしくなりそうなくらいに、気分が高揚している……
体が熱くなって、とりわけ頬が火照っているようで熱感がある。

香穂子がプールサイドに辿り着くと、既に吉羅が待ち受けていた。
香穂子に軽く手を上げる長身の彼に近づくにつれて、心臓が大きく跳ねるようだ。
「着替え終わったようだね。では、軽く体を動かしてから泳ぐとしよう」
浅黒い肌……思った通りに、肩幅が広い。
スーツの似合う体格をしていると常々感じていたけれど、上半身だけでも、無駄な肉など一切ついていない、引き締まった体つきをしていると思う。
腰が高くて、脚が長い……
まるで外国人モデルのようなすらりとした脚線をしていると思って、ついつい見入ってしまった。

吉羅の横に並んで、軽いストレッチを行う彼の真似をする。
恥ずかしさを打ち消す意味合いで、早くプールの中に入ってしまいたい。

水に入って、水中にいる吉羅の姿を目で追って探した。
まずは先日の約束を果たしてもらうことを思いついたので、彼に言わないとならない。
「うん?私のことをじっと見つめているが、どうかしたのかね?」
「あの、泳ぎ方を教えて欲しいんです。効果的ないい方法を教えてくださるって約束しましたよね?」
「ああ。効率よく体力をつける泳ぎ方か。よろしい、私の知っている知識でよければ、君に伝授するよ。来たまえ、まずは君の泳ぎのフォームを確認しよう」

まるで、スイミングスクールのコーチとその生徒のような感じになってしまい、吉羅のマンツーマンの懇切丁寧な指導を受ける。
少しは色気のある雰囲気になるのを僅かに期待していたのに、水泳の指導一辺倒になってきつつあった。
でも、下手に彼を意識し続けていては香穂子自身の体と精神状態が保たなくなる。
クロールや平泳ぎから始めた香穂子の泳ぎ方を吉羅がチェックして、腕の上げ下ろしや、息継ぎなどの方法を教えてくれた。

彼が手本として泳ぐ姿は優雅なのにとてもスピーディで、思わず見惚れてしまうほどだ。
水泳選手にもひけをとらないくらいに、吉羅の泳ぎが熟達しているのが素人目にもわかる。

スポーツマンかもしれないとは思っていたが、バスケでも火原を負かすほど強くて、おまけに水泳までも熟練しているなんて……
これで彼を好きになるな、惹かれるなと言う方が無理だ。
吉羅に抱く尊敬と憧憬の念が彼への恋愛感情を増幅させていく。

「――そろそろ疲れたのではないかね?無理をせず、一度休憩をするといい。体を休めることも重要だ、体力を過信していては水の事故にも繋がるからね。向こうにデッキチェアがある、プールから上がって少し休もう」
吉羅がプールの縁に手をかけて、先に上がった。
彼とともにデッキチェアに腰掛けて、休憩をとることにした。

水という遮蔽物がないこの状態で、上半身は裸の吉羅と接近していることを意識した途端に、一度は落ち着いたはずの胸のざわめきが再び襲ってきた。
広い肩に、厚みのある胸板と、それに続く締まった腹部と……
……その下は、恥ずかしすぎてとても直視できない。
自分たちは今限りなく裸に近いような、それこそ下着同然の姿でいるようなものだと思うと、甘い感情と一緒に動悸がしてくる。
「どうだね、プールでのトレーニングは?」
そう言いながら髪をかき上げる吉羅がちらりとこちらに視線を走らせた。

流し目の端で香穂子を捉えるその仕草に、心が波立つ。
吉羅が腕を上げると、水泳でナチュラルに鍛えられた上腕の筋肉が盛り上がるのがわかる。
彼の何気ない動作や視線にさえも、気持ちの昂ぶりが止まらないほど香穂子の内心は動揺していた。

「あ……はい。とてもいい勉強になりました。体力づくりも演奏には重要なんだなって、理事長に教わったおかげでよくわかりました」
「それは結構。どの演奏家も体力をつけるために努力をしているからね。どうやら、今日君を連れてきたのは無駄ではなかったらしい」
香穂子の真摯な取り組みに満更でもない様子の吉羅に、思い切って次回も教えて欲しいと頼むことにした。

「あの……また、機会があれば、こうして教えていただけますか?」
「そうだな……君の演奏の向上を願う人間としては、無碍にはできない頼みだ。前向きに検討してみても構わないよ」
「ありがとうございます」
「私は、君を一人前のヴァイオリニストへと導く立場の者だ。……君が本当に必要とするなら、力を貸すにやぶさかではない」

まるで国会答弁みたいな婉曲な、持って回った言い方が、いかにも彼らしい。
吉羅がお得意の理屈を重ねて大義名分を探すような言い草をしていても、香穂子の努力を惜しまない姿勢に好感を持ってくれているのは間違いがない。

今日は吉羅に好印象を残せたようで、とても嬉しかった。
願わくば香穂子の体にも、少しでも魅力を感じてくれていたらと祈るような気持ちでもいた。
ここで香穂子の体型に一言でも吉羅が言及したとすれば、それはたちまち立派なセクハラになってしまう。
だから彼が何も言ってくれないのは、そういうことだ……

泳いだ後の心地よい疲労で少し重い体を感じながらも、香穂子の心は浮き立っていた。



(やぶさかではない、までがイベの中身です~)

脚色した香穂子ちゃんの心情部分が、かなり理事長を男として意識してエロっぽくなってしまった…(´・ω・`)

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休日――
香穂子は自主練習のために学校へやって来た。
正門から入って少し進むと理事長の吉羅の姿が見えたので、香穂子が話しかけようとする前に彼から声をかけてきた。
「うん?そこにいるのは日野君かね?」
「はい、日野です」
「やはりそうか。今日は休日のはずだが……自主練習か」
「えっ、どうしてわかったんですか?」

驚く香穂子の顔を眺めつつ、吉羅が人の悪い笑みを浮かべる。

「驚くことはない。ヴァイオリンケースを見れば誰でもわかるよ」
香穂子はふと吉羅の髪を見上げると、ほんのりと濡れていることに気づいた。
「あの、理事長の髪が湿ってるみたいですけど、シャワーとか浴びられたんですか?」
「ああ、これは違う。ジムに併設されているプールで泳いできたんだ。仕事一辺倒だと運動不足に陥りがちでね、時折、ジムへ汗を流しに行っているんだよ。仕事をするにしても、まず体が第一だ。健康でなくては始まらないからね」
「はあ……いいですね。羨ましいです……」

プールといえば、香穂子は今年はまだ学校の体育の授業でしか泳いでいない。
きっと設備の整ったプールで泳げている吉羅のことが羨ましくなって、ついついそんな言葉が口を突いて出た。
ついでに溜息も。
「――ふむ。そんなに羨ましいのなら、君も泳ぎに行けばいい。ちょうど今日は休日だ、練習後に君を拘束するものはないだろう。近くには市営プールもあるし、流れるプールなどは家族連れにも人気だと聞いたんだが?」
「……あの、違うんです……」

「ん?違うと?君はどういう目的でプールに行きたいと言っているのかね?]
「市営プールじゃなくて、ジムのプールというものに興味があるんです」
「ジムのプールに?……さて、それはどういう意味かな?確かに、市営プールより設備が充実している場所は多いが……」
吉羅は意味深な笑いを湛えながら、面白そうに香穂子の反応を窺っている。
「ただ泳ぐだけなら、どこのプールでも同じことだ。値段もリーズナブルだしね」
話を切り上げようとしているらしい吉羅を、香穂子が慌てて制止した。
「あっ、ちょっと待ってください。話はまだ終わってません」

「まだ私に用が?一体何かな」
「あの、効率よく体力をつける泳ぎ方を教えてくださいませんか?」
「……なるほどね。そうきたか」
吉羅がおかしそうに笑いながら小さく呟いたのを、香穂子は聞き返した。
「――いや、こちらの話だ。気にしないでくれたまえ。確かに、効率よく体力をつけるための泳ぎ方はある。どうせ時間を費やすなら、有意義に使いたいという君の気持ちは理解できるよ。わかった、そういうことならば仕方がない。君を、私の行っているジムのプールへ連れて行ってあげよう」
「あ、ありがとうございます」

「ちょうど、ビジターチケットもまだ手元にあることだしね。将来有望なヴァイオリニストに投資をするのも教育者としての役割だ。加えて言えば次の休日、桐也を連れて行く約束をしている。一人連れて行くのも、二人連れて行くのも同じことだ」

……なんだ、二人っきりで行くんじゃないんだ……
香穂子は衛藤が一緒だと知って、少しばかり落胆する気持ちを抑えられなかった。
「君が望むのなら、桐也と一緒に連れて行くが……どうかな?」
「はい、お願いします」

それでも、これは千載一遇のチャンスには違いない。
香穂子は勢い込んで吉羅の問いかけに即答してしまった。
吉羅が愉快そうに笑っている。
「――わかった。では君も同行するといい」
「ありがとうございます」
そう言って頭を下げる香穂子に吉羅が応じる。

「なに、礼には及ばないよ。先刻も言った通りに、若いヴァイオリニストの手助けも私の仕事のうちだからね。……ついでに、桐也の相手もしてくれると大変ありがたいのだが」
「はあ……」
香穂子は、そんなことを言ってくる吉羅に、もしかして二人きりになるチャンスなど微塵もないのだろうかと不安がもたげてきた。
衛藤が一緒というのも、香穂子とは一対一になる機会などないという牽制のようにも思えてくる。

でも、プールに一緒に行って泳ぎを教えてくれるという吉羅の提案に、期待が高まっていく。
しかも彼の通っているジムのプールなのだから、相当に凄い設備のハイクオリティな施設だろうと容易に予想がつく。

それよりも、吉羅の体を想像してしまうと……
どんな体格をしているんだろうか。
普段から鍛えているのだし、ジムで泳ぐのを日課にしているくらいなのだから、痩せぎすではなくて適度に筋肉もついていそうに思った。
普段は真夏でも学院にいる時には長袖の服を着ている彼の、その服の下……
ついついはしたない想像をしてしまうと頬が火照る。

それから、一番に大事なことがある。
何を着て行こうか、水着はどんなものにしようか?
――いっそのこと水着を新調しちゃおうか。

来週ならまだ時間の猶予はあるし、この夏の新作水着をチェックしに行きたい。
可愛い系のものにしようか、それともセクシー系の……?
でも、あんまり気負って体の線を剥き出しにするのも、露骨な女アピールになってしまって吉羅に退かれたり、苦笑されてしまいそうだ。
華奢な香穂子だが、体を露出する水着姿を吉羅に見せるのは……やっぱり、少し恥ずかしい。
制服の下の素肌を見せる、見られるというのが照れくさい。
とても意識してしまいそうで、今から水着姿になった吉羅と自分とを想像するだけで、鼓動が早まっていく。

あれこれ考えた挙句に、可愛くて適度にセクシー要素もあるセパレートの水着を選んで買ってきた。
悩みに悩んだ末にいろんな店を梯子して、試着を重ねて、納得できる雰囲気のものを選んだ。
こんな乙女のいじらしい気持ち、吉羅は理解してくれるだろうか……

――次の休日。
待ち合わせの駅前に佇む香穂子に、衛藤の元気な声が響いてきた。
「香穂子~!こっちこっち!」
吉羅の車から降りてきた衛藤が、車の方に香穂子を誘導した。
「今日はあんたもジムに行くんだって?暁彦さんから聞いてびっくりしたよ。暁彦さん、俺が頼んだ時も腰が重かったから」
「どうせ動く羽目になるのであれば、二人一度の方が楽なのでね。さて、顔ぶれも揃ったところだし、ジムに向かうとしよう」

一同が吉羅の車に乗り込むと、都心部を目指して出発した――

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プロフィール
HN:
yukapi
性別:
女性
職業:
派遣社員だけどフルタイム 仕事キツい
趣味:
読書。絵を描くこと、文章を書くこと。
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