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Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」、漫画金色のコルダ、Vitaのゲームをベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載しています。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや、オクターヴの補完テキスト、パロディマンガ無料掲載中。一部パスワードあり
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前回、香穂子からもバスケ対決の話を聞いていた天羽だが、いざ試合の時にはすぐに知らせると前もって彼女に話を通してあったのだ。
当然、天羽の存在が吉羅から気取られないように遠くに潜んで望遠機能で撮影を敢行している。
「ベストショットは沢山撮っておくから、あんたは肉眼でその目に焼きつけておきな」
との天羽の言に従い、香穂子が息を弾ませながらバスケコートへと急いでやって来た。

既に試合は始まっていたが、ボールをキープしている火原がチームメイトにパスをしようとしたが、吉羅がジャンプしてボールを奪ってしまった。
慌てて三年生が吉羅を追うが、足の速い彼に追いつけない。
ゴールまでの独走を許してしまい、シュートが決まった。

吉羅の鮮やかな体の動きに、香穂子は目を奪われていた。
スポーツ全般が得意な火原だが、中でも彼は特にここらや街中の公園などでもバスケしている姿をよく見かける。
ということは彼の得意中の得意のスポーツなはずだが、吉羅はあっさりと火原のお株を奪ってしまうほどの活躍ぶりだ。

想像以上の吉羅の姿に、香穂子はときめきが止まらない。
心臓が今にも破裂してしまいそうなくらいに早く打っている。
高校生相手におとなげないとリリは言っていたが、吉羅の主張通りに手を抜く方が火原たちに失礼だ。

……もしかして、吉羅はこれでも多少は手加減をしているのかもしれない。
真剣勝負をしているように見えるが、吉羅の唇に浮かんだ笑みが余裕綽々でいるのを表していると思う。

バスケの得意な火原を文字通り手玉に取るほどなのだから、吉羅が現役の高校生の時代には相当にやり込んでいたのだろうか?
それでいて天才と崇められたヴァイオリニストだったというのだから、彼は一体どれほど多くの才能を発揮していたのだろう?
つくづく、世の中には天に二物も三物も与えられている人間もいるものだと、吉羅を見ていて思わされる――

フル・ルールの試合形式で、五分間の前半戦と後半戦の間に一分間の休憩が挟まれる。
通常のバスケコートの半分に縮小されているとはいえ、コート内を走り回っていてボールの奪い合いをしていれば、それなりに疲れるだろう。
だが、吉羅はさほど疲労を感じさせない。
どこか冷たささえ感じさせるいつものごく平静な態度と表情でいる。

香穂子がネットにしがみつくようにして、食い入るように試合を観戦していたのに気づいたようで、こちらを見上げる吉羅と視線が合った。
気まずく感じて目を逸らそうとしたその瞬間に、吉羅が唇に微笑を浮かべる。
きっと最初から彼は香穂子の存在に気づいていて、それで意味ありげに微笑んで見せたのではないか。
そう思えてしまった。

試合は白熱の展開を見せるが、やはり吉羅の活躍の機会が多い。
彼が相当に強いと知ったチームメイトから積極的にパスを回され、それを奪いにくる火原やその仲間たちを巧みに躱し、シュートを決める。


香穂子は、体中がうずうずするような奇妙な高揚感でいっぱいになった。
できるのなら、声を限りに「理事長、頑張って!!」とでも叫びたい。
だが現実には、自分に好意を抱いてくれている火原の気持ちを察しているだけに、とてもそんな残酷な真似などできはしない。
火原に、「どちらを応援していたか」などと訊かれたら、きっと自分は火原だと答えてしまうだろう。

吉羅がパスを奪ったり、ボールを奪回しに来る敵の攻撃を避ける度に、素敵!だとか、かっこいい!!とか、胸の裡で精一杯に叫んでいた。


秘めた恋は辛い……
ここで吉羅への好意を剥き出しにする訳には絶対にいかない。
火原を落胆させ、吉羅に恥をかかせ、何よりも自分がよりによって理事長を好きだなどという感情を公に晒すことなどできない。

――試合は、吉羅のチームが点差をつけて勝利が決まった。


「ああ~、もう。すごいなあ!理事長、すごすぎますよ。おれたちの完敗ですね!」
火原が大汗を流し、息を乱しながらそう呟いた。
だが、彼の表情は負けたにしてはとても明るく、声も力強い。
「いい気分転換になったよ。君らには感謝をしなくてはならないな」
吉羅が笑みを湛えて三年生たちにそう告げる。

「では、私は執務に戻る。君たちも、予鈴の前に教室に戻りたまえ。よく遊んだ後にはよく学ぶ。実に高校生に相応しい振る舞いだ」

「あのっ、理事長!また、来てくれますよね?」
「――ああ。私が気分転換をしたくなったらね」
火原からの声かけに、手を振って応じる吉羅だった。


そこへ、香穂子が小走りに吉羅に近づいた。
「ああ、日野君。今のを観ていたのかね」
「はい。あの……とっても、素敵でした……」
冷えたスポーツドリンクを自販機で買ってあって、まだまだ冷たさを保っているのを手渡した。


「ありがとう。ちょうど、その手の飲料を買わねばと思っていたところだったんだ」
吉羅がペットボトルを受け取る時に、微かに香穂子の手と彼の指先とが触れ合った。
思わぬ接触に体がビクついてしまった。
吉羅はそんな彼女を見下ろして微笑んでいる。
「そろそろ予鈴の鳴る時刻だ。教室に戻りたまえ」
「はい……」

香穂子は、今さっき目に焼き付けた吉羅の雄姿を反芻するので精一杯だった。
次々に新たな魅力を見せてくれて、惚れ直してしまう。
彼に惹きつけられる。
自分ではどうしようもない、抗い難い磁力の如き何かで強烈に誘引されているように感じる。

去っていく吉羅の後姿を見つめながら、さっきまでの興奮状態の余韻に浸っていた。


そんな香穂子の肩を、背後から現れた天羽の手が叩いた。
「ふっふーん、一大スクープゲット!早速記事にしちゃってくるわ。
日野ちゃん、出来上がりを楽しみにしててよね!それじゃっ」

「あ、ちょっ……天羽ちゃ……」
香穂子が、それはまずいんじゃないかと止める間もなく天羽は風のように素早く去っていってしまった。



(まだ続きます~。絵ばっかり立て続けにアップしましたが、ちゃんと書いてました(`・ω・´)シャキーン)

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