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Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」、漫画金色のコルダ、Vitaのゲームをベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載しています。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや、オクターヴの補完テキスト、パロディマンガ無料掲載中。一部パスワードあり
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指輪を返そうとする香穂子に対して、吉羅は首を振った。
「君は代価に相応しい働きをしてくれた。その指輪に価値があると思うなら、それなりに大事にしてくれたまえ」
優しい、慈しむような笑顔で言われてしまった。

こんな時だけ、学院では滅多に見せない優しい表情を向けてくるだなんて……ずるい。
もっとその眼差しを、この腕を、独占したい気持ちが膨らんでくる。
本当に婚約者だったなら。
いえ、彼の恋人になれたならどんなにか……


「……理事長が、私を本当の婚約者として。……恋人として扱うつもりがないのでしたら、やっぱりこれは受け取るわけにはいきません」
香穂子はうつむいてそう告げた。
心臓の脈動が早くなる。
彼の顔を見るのが恐くて顔を伏せる。

「誰が、一言でもそんなことを言ったかね?」
彼の声は穏やかで、呆れたとか怒っている響きはない。
「……ひとつだけ、聞かせてください。理事長は、私をどう思っていらっしゃるんですか?」
「だから言ったろう?……今日は、君は私の婚約者なのだと。君を大人の女性として扱うと決めたのだから、子供のように駄々をこねないで貰えるといいんだが」

勝手な言い分に聞こえてきて、段々と香穂子の中で理不尽だという想いが湧き出てくる。
17の小娘に向かって、それはないだろうと思う。
こんな時だけ大人の態度を示せだなんて。

「……じゃあ、今夜だけは。私を、本当の婚約者みたいに思ってくださるんですよね?」
「そのつもりでいるんだが」

体温を感じるほど接しているのが嬉しい反面、苦しくなる。
香穂子が吉羅への思慕を募らせているのに、彼は芝居なのか本気なのかまったくわからない。「……帰りたくない」

(絵と本文の続きが出てきます。絵に抵抗ある方閲覧ご遠慮下さい)






香穂子は、そう呟いて吉羅の胸に体を寄せた。
ひどく大胆なことをしているとわかっているけれど、もう止められない。
彼の胸板にそっと腕を這わせる。
吉羅は懐に抱く形になった香穂子を見下ろしている。
彼女を抱き寄せるわけでもないが、かといって突き放すのでもなかった。

「……君は、その言葉の意味をわかって言っているのかね?」
低められた彼の声。
諭すような深い響きの声音がして、次に何を言われるのか恐かった。

好きなのに恐い。
好きだから恐い。
「……わかっています」
喉が締め付けられるようで、声が掠れて震える。
そこから体に震えが移行していってしまう。

背中に、吉羅の手が触れられた。
大きな温かい掌のぬくもりが伝わる。
それは快いはずなのに、心が痛い。
好きじゃないなら触れないで欲しい。
苦しくて切なくて、身体が引き絞られていくようだった。

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