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Since2013.10~「100万人の金色のコルダ」、漫画金色のコルダ、Vitaのゲームをベースに、吉羅暁彦理事長と日野香穂子の小説を連載しています。現在単発で吉羅理事長楽章ノベライズや、オクターヴの補完テキスト、パロディマンガ無料掲載中。一部パスワードあり
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姉が息絶えたその時から、僕の中のあらゆる明るい感情は消えてしまったに等しい。
笑うこともできず……波濤のように押し寄せてくる悲しみと、後悔の念に自分が徐々に食い潰されていくのを、静かに感じながら。
それに抗うこともせず、ただ――与えられた生を持て余している、それが今の僕でしかなかった。
死にたいわけじゃない。
このまま生きているのが辛いだけだ。
積極的に死を願う気持ちはない。
胸の中が黒い絵の具で塗りつぶされていくようだ。
心の内側に大きな空洞ができてしまったようで、今は何をするのでさえも虚しい。
心理学の本、愛する人に死なれた人が書いた本を読み耽っても、一向に心に響いてはこなかった。


――人は、死んだらどうなるのだろう。
そんな疑問を誰もが一度は考えたことがあると思う。
死者は何も語ってはくれず、その姿は見えず、声は聞こえない。
彼女の現状がどうなっているのかさえ、僕にはわからない。
願うのはただ一つ、姉がもう苦しんではいないことと、安逸な中にいてくれればいいと――ひたすらに、それを祈っていた。


想い出は消えることなどない。
場面場面が、まるで瞬間を切り取られたように色鮮やかに蘇ってくる。
姉が留学に発つ少し前に、姉とその親しい友人たちと、江ノ島に遊びに行ったっけ。
日本の風情を味わうには、やっぱり自分の愛着のある場所で、思いっきり楽しんでから行きたいと……
あの日の波間の輝きや、水の冷たさも今でも覚えている。
友人たちと戯れている姉の笑顔、飛び交う海鳥の群れと鳴き声。


あの時は金澤先輩がトンビにパンを奪われて怒っていたけど、僕らはそれがとてもおかしくてたまらなくて、馬鹿みたいにいつまでも笑っていた。
大勢の人間の中でただ一人パンを持っていた彼の傍まで、焦げ茶の影が閃いたと思ったら、あっと言う間にトンビに袋ごと持ち去られてしまって――
近くの売店には、トンビに気をつけろという注意書きもあったのに。
江ノ島に限らず、神奈川の海沿いの地域では当たり前にある光景だから、気をつけろと僕は金澤先輩に忠告したのに、彼は「面白いから持ってってみろ」と言ってパンを振り回したりしていたのだ。

――そうだ、金澤先輩はどうしているのだろう。
姉の葬儀以来連絡は来ていないし、こちらからもしていない。
彼は声楽家を目指しているので、星奏学院大の音楽学部で今懸命に励んでいるはずだ。
授業時呈も多く必須単位も履修しなければならない。
なぜ彼と顔を合わせないのか……単純に僕が学校に行っていないからだ。
外部からの電話も殆ど受けずにいるし、家にかかってくる電話が鬱陶しく感じる時には電話線をモジュラージャックごと引き抜いてしまっていた。


……一人にしておいて欲しい。
そう思って引きこもっているくせに、こうも長い間他人の声さえも聞く機会がないと慰めてくれる人もいなくなってしまったのだ……と、寂寥感 が押し寄せてくる。
勝手すぎる自分の言い草に、我ながら呆れ果てる思いだった。


本を買いに行きたくて、久しぶりに外出の準備を整えて、家のドアを開けた――



外は眩しくて……一瞬目の前がくらんでしまいそうに明るかった。
陽の光が暖かく感じるのと同時に、姉はもうこの陽光のぬくもりを感じることはないのだと――改めて、喪ったものの大きさを思い知らされる。


大きな悲嘆ではなくて、今度はそういった日常の些細な出来事が悲しみに繋がっていく。
歩いて行く街中の風景は変わらないのに、姉はもうこの佇まいを見ることはない。
この風を、光を感じることさえできない遠くへ行ってしまったのだ……


大きな書店に出向いて、あちこちのコーナー の書籍を探してみた。
新しい本の匂い、インクの匂いが何故か心を落ち着かせてくれた。
本の世界にのめり込めば、今感じている死にたいくらいの苦しみを、一時だけでも紛らわすことができる。
だからこそ、一層……


書店の外へ出て、さあ帰ろうかと思いながら駅前のロータリーへと来た。
本の買い物がそこそこ重くなってしまったので、帰路はバスにしようかと思って、バス停が立ち並ぶ箇所へと歩いて行った。


ふと視線を向けた先に、なんとはなしに怪しい人影が見えたような気がしてその人物の方へと少し近づいた。
その男は黒っぽい派手なスカジャンを着て、下はズタズタのジーンズを穿いている。
しきりに野球帽の帽子のツバを弄っているのだが、そわそわとしてずっと体を忙しなく揺らしている。
僕が言うのもなんだけど、明らかに挙動不審なそいつを眺めていたら、なんとそいつの方から僕に近づいてきたではないか――



「よう、兄ちゃん。電話よこしてきたんだろ?いいの仕入れてあっからよ、一本早く出せよ」
不自然に押し殺した声で囁いてきたそいつは、妙に馴れ馴れしい態度だった。
「――は?」
僕には男の言葉の意味が何一つ掴めずに、間抜けな返事が出た。
「とぼけんなよ。バツ欲しいって言ってきたのはおめーだろうが。ほら、あっちの隅っこ行ったら出してやっからよ、金と引き換えだ」

――その隠語でやっと理解できた。
どうやら男は薬物の密売人で、取引相手が僕だと勘違いしているのだ。
「人違いですよ」
「ああ?今更何言ってやがんだよ。早く金よこせっつってんだろうが」

男の口調が変わり、小さい声だがドスを効かせた低音で囁いてきた。
「ですから、人違いだと言っているんです」
「とぼけんなよ、おめえ。その顔色、常用者だろ?いくらばっくれたってわかるんだよ、こっちにはよ」

どうやら、僕は外見で薬物中毒者と見間違えられているらしい。
服装は小奇麗にしてきたつもりだが、この不健康な様子ではそう思われてしまうのかと、忸怩たる思いにかられた。
男が僕の肩に手を回そうとしてきたのを振り払おうとすると、相手が勝手に滑って転んでしまった。
「てめえ!何しやがんだコラ」
男は喚き散らしながら、みっともなく手足をじたばたさせていた。
知るか、そっちが勝手に勘違いをしてきたんだろうが。


その隙に僕は逃げ出したのだが、どうもここ暫くの不摂生が祟ってるようで体が重く、思うように動けなかった。
日曜の夕方、薄闇が迫ろうとしている中で僕は危機的な状況にいた。
警察に駆け込もうにも、息切れがひどくて交番まで辿り着けるのか――
掴みあいになってしまうか、それとも一方的にやられてしまうのか。
それも悪くはないと自暴自棄な考えが掠めたが、男の怒声が背後から聞こえてくると、僕は倒れそうになる体を動かそうとして、必死に足掻いた……

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「――暁彦。暁彦、起きて。起きなさい――」
柔らかな姉の声がかかり、僕は肩を軽く揺すぶられる。
まだ重い瞼を開くと、眩い陽光とともに姉の輝くような笑顔が間近にあった。

「――ああ、姉さん。いつの間に留学からこっち戻ってきたの?」
「あなたが調子乱してるって聞いて、ちょっとだけ様子を見に来たのよ。どうしたの?ここのところヴァイオリンも弾かないどころか、学校にもろくに行ってないって言うじゃない」
「だって、それは。姉さんが――」
死んだ――そう言いかけるのに、僕の口からはその言葉が出て来ない。

「私がどうしたの?……おかしな子ね。悪い夢でも見てたんじゃないの?」
姉は屈託なく明るい笑みを向けて、僕を見ている。

ああ、そうか。
姉さんは生きているんだよ、本当は。
留学先で亡くなっただとか、そんなのが嘘で夢だったんだ。
だってほら、今だって元気でそこにいるじゃないか。
僕が酒に溺れて学校にろくに通わずに、ヴァイオリンを捨てた形になるだなんて馬鹿げている。

だから僕は――

「ねえ、暁彦。何か弾いてよ」
「何?リクエスト?」
「そうよ」
「――だって無理だよ。僕のヴァイオリンはずっと学校に置いてあるし。家にあるやつはみんな調子がおかしいし。第一、僕はもう……」
「もう……なあに?どうしたの?」

――おかしい、何かがおかしい。
ひどい違和感を覚えているのに、どうしてかそれの正体がなんなのかが掴めない。
話そうとする顔がこわばり、唇が震えていく。

「僕はもう……ヴァイオリンは――」
そう言って姉の顔を見ると、彼女は悲しそうに僕を見つめていた……

――目覚めると、カーテンの隙間から陽光が漏れているのがわかる。
今は何時なのかもわからない、時間の感覚さえあやふやだ。
全身に汗をかいていて……ついでに涙のおまけつきだ。

いっそ、気が狂ってしまった方が楽なのに…………
酩酊が去って素面の状態に戻ると、僕の中の理性が僕を苛む。
幾度も幾度も、繰り返し姉の夢ばかりを見続けている。
毎日のように、酷い時にはうたた寝をしているような時でさえも。
日に何度も――心を切り裂かれるような辛い悪夢を……

どうして、未だに正気を保っていられるのだろう。
おかしくなってしまえるものなら、そうなってしまいたい。
現実だけでも辛く苦しいのに、夢の中でさえも悪夢に追い回されてしまうだなんて、ひどすぎる。

夢の中の姉は、明るい笑顔で現れて悲しそうな顔で消えた。
何かを言いたかったのだろうか。
僕にヴァイオリンを捨てるなと、やめて欲しくないと言うのだろうか。
――今の僕は、ヴァイオリンの曲を聴くことさえしたくはない。
何故なら、姉と過ごして練習に励んできた日々を否応なく思い起こさせられるからだ。
あの曲はいつ練習した、姉と奏でたものだと……
楽しかったあれこれの想い出が、今では鋭い棘となり変わって僕を突き刺す。

だからこそ、音楽が絶えない音楽科の自分の教室には行きたくないのだ。
今の僕にはそんな環境に身を置くことは、死ぬよりも辛い拷問に等しい、地獄の責め苦に変わってしまった……

勇気がない、意気地がないと呆れたり罵る輩もいるだろう。
僕の才能を惜しんでくれる教師にも講師にも申し訳ないが、僕の音楽はもう――
姉とともに、あの冷たい墓石の下で眠りに就いてしまった……おそらくはこのまま、永遠に。

わかっているんだ、こうしている僕を姉が見ているなら、きっと彼女は悲しんでいるはずなのだと。
生を持て余して、日々をただ悲嘆に暮れながら自堕落に、無為に過ごしている僕を姉がどこかから見ているのなら、きっと彼女も泣いているだろうと……

――でも、せめて今だけは悲しみのどん底にいたとしても、こうやって姉の死を悼んでいたい。
いつか冷静になれる時が訪れてくるまでは、ここでこうして喪に服していたかった。

誰かと話すことさえも億劫でならず、元々本は好きだがのめりこむように大量の本を次々に読み耽ったり、クラシックと無関係なCDを聴いたり、DVDを観たりして日を過ごしていた。

通いのお手伝いさんが週に2・3回訪れて来るが、僕の部屋には決して入れさせなかったし、食事もろくにせずにいる僕を心配してくれていたが両親は不在がちな中、僕は一人自室にこもっていた。
時には姉の部屋に入り、留学前のそのままになっている室内で……
姉の遺した数々の品物を見ては、滂沱の涙が流れるのに任せた。

もう、彼女はここへと戻ってくることはない。
それなのに、家のあちこちから姉の気配を感じることがある。
振り向けばそこに姉がいるようでたまらなくなるし、時にはすぐ背中側に――ひどく近くにいるような気配をさえ感じるのだ。

錯覚なのか、霊感と称されるものなのかもわからない。
僕は幽霊や霊魂の実存の可否については、どちらかと言えば懐疑的な立場だったが、ファータなどという非現実的な存在があるのだから、もしも人が亡くなった後でも魂が残るのなら、そうであって欲しいと願っていた。

いつも家にいたはずの人が急にいなくなる。
遠くへ離れて行ってしまった――
それが人の死なのだと思っていたし、姉はまだ海外の留学先に居て、ただ連絡がつかずにいるだけなのだ、そう思いたかった。

いつでもここにいた人が、もう二度とここへは現れなくなる。
同居人が亡くなった後の遺族は同じ家でどうやって暮らして行くのかと、とても残酷なことじゃないのかと、以前思っていたことがある。

家中のあちこちに、彼女の足跡と息吹が残っているのだ。
あのテーブルで、あの椅子で姉は笑っていた、本を読んでいた。
時には僕への説教も行われた。
反抗期真っ盛りの十代中盤、異性の姉には理解してもらえないだろう荒々しい衝動が起きたりしていた。
時に干渉してくる姉を鬱陶しいと思っていたし、放っておいてくれと思っていたこともある。
僕の年齢が上がるにつれ、ようやく姉に少しは優しく接してやれる心の余裕ができてきた、そう感じていた。

いつのまにか涙のしずくが落ちて、僕の手の甲を濡らしていた。
泣くなんて男らしくない、耐えなければならない。
そう思っていても、心の裡で吹きすさぶ感情の嵐は一向に去ってはくれない。
せめて人前で泣かなくなれる時が来るまで――
涙が涸れ果ててしまうまではこうしていたかった。

姉の死後の約一ヶ月は、こうして日々が過ぎ去るのを待っていた。

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――これは現実のことなのか、未だに判然としない。
出口のない悪夢の中を彷徨い続け、迷い込んで歩き続けている……
そんな錯覚が僕の五感を鈍らせていた。

もう、この世界のどこにもあの人はいない……
辛すぎる現実を現実として捉えたくはなくて、眠りの中へと逃避する。
今度は終わりのない悪夢が、毎日、毎晩僕を責め苛みにくる――

姉が実は生きていた、そんな夢を幾度となく繰り返し見続けていた。
それには、よくもまあこんなにも……と言いたくなるほどのバリエーションが付き物だった。
姉は病気にもかかっていなくて、留学先で元気にしていて、今はまだ帰って来ていないというものだったり。
生き返ってきても、それはこの一日だけなのだと悲しげに言われて、僕はその姉の手に取りすがって泣いたり。

――その時には、生まれて初めて夢で涙を流しながら起きるという経験をしてしまった。

実は生きていた、実は元気でいた――というのは僕の中の切実なる願望だ。
それが夢という形をとって現れると、夢の中では本当にこれが現実なのだと思い込んでいるのだから、始末が悪い。
僕の望みが目の前で具現化しているというのを、夢の僕は本心から信じ込んでしまっている。

眼を覚ますと、いつもいつも決まって自分に言い聞かせる。
姉はもういない、姉はもう死んでしまったのだ――と。
一週間経とうが、半月経とうが、……そして一ヶ月経とうが、僕の感覚は現実離れした浮遊感を伴っていて、全てにおいての気力が湧かない。
積極的にではないが、体調が悪いと言っての登校拒否を行い続けた。
三年生の半ばを過ぎて、大学への進学を考えなければならない時期だ。
だが、到底そんな気になどなれやしない。

姉を最終的に追い詰め、その命を擲たせたのは音楽だ。
以前まではソリストになりたいと希望を持ち続け、必死の思いで修練を積み重ねてきた。
――が、姉を殺した音楽になど、僕は身命を賭す謂れなどない。
日増しに音楽を、そして僕ら姉弟を音楽の道へと誘導してきた音楽の妖精・ファータどもへの憎しみが募ってくる。
これは姉自身が選んだ道だ、ファータの強制などでもなんでもないのだ。
理屈ではそうわかっている、アルジェントをはじめとする連中を憎むのは筋違いなのだと、理性の中では警告を発している。

ただ――もう、自分の目の前には現れてくれるな。
そうアルジェントに告げた時、知らずに涙がこぼれ落ちた。
姉の葬儀から一週間が経った頃だろうか、僕の涙を初めて見たアルジェントは悲しそうな目をして、何も告げずに虚空に消えた。

最初は、理不尽な運命への怒りが大きかった。
なぜ姉が若くして死ななければならなかったのかと、血飛沫くような憤りが僕の中で膨らんでいった。
体調が悪かったのにそれを我慢しぬいて隠し通していた姉にも、姉の体調不良を早くに察知してはくれなかった周囲の人間にも怒りを覚えた。
それも一種の八つ当たりでしかない、わかっている。
最終的には姉自身が、まるで自死を選ぶかのように音楽に殉じて逝ってしまったのだ……

何故、僕は姉の留学先へと赴かなかったのだろう。
何故、もっと頻繁に電話をしてやらなかったのだろう。
一回顔を見に行くよと言ったその時に、どうして実行に移さなかったのか。
――何故、どうして……
僕が早くに気付いてやりさえすれば、姉はまだそこに居て僕に微笑みかけてくれていたのかもしれない。
姉を救えなかった自分へと、繰り返しの後悔の念が訪れてくる。

最終的には自分自身への不甲斐ない思いが、一どきにどっと押し寄せてくる。

――もっと、姉に優しく接してやっていればよかった。
僕を思っての助言や諫言を、僕はまともには取り合わなかったり、話半分に受け流してしまったり、そんなことばかりをしていた。
そんな時、いつも決まって姉は仕方なさそうに弱々しく微笑を浮かべていた……

最後の最後に、姉と話したシーンがリフレインする。
空港で姉を見送り「体に気をつけて。頑張って」
そんなありきたりの、当たり前の言葉しかかけられなかった。
「体の調子がおかしくなったら、すぐ医者に行くとか、日本に帰ってきて。一人では抱え込まないで」
――今ならば、姉に僕はそう言ってやりたかった。
搭乗予定の飛行機へと向かう後姿、それがいつまでも僕の脳裏に焼きついている。

自分を責め続け、その度に僕は涙を流した。

涙というものは、どうやら涸れ果ててしまうことなどないらしい。
辛い現実を忘れたくてアルコールに手を出してみると、余計に悲しい思いをするだけだったりした。
酔えば思考回路が変わるだろうと思えば、ひどく落ち込む結果に終わって後には頭痛、悪心、自己嫌悪の嵐だ。
だが、肉体的な苦痛で精神的な煩悶を押さえ込めている、それだけは現実の出来事だった。
だから、うまくもないアルコールを貪るように飲み続け、酩酊の中で極彩色の夢を見る――
何が現実で何が妄想なのかの境目さえがあやふやに溶け崩れていて、僕のこれまでの日常生活は完全に瓦解していった。

自分が音楽科の生徒であるという現実を、これほど呪わしく思う日が来るとは、姉が元気だった頃は想像もしていなかった。
一ヶ月近く学校に登校しない僕を心配して、担任や副担任、受け持ちの講師などが電話をかけてきたり、時には大挙して家まで来訪してきた。

僕はもう音楽の勉強をする気は失せてしまった、今は何よりも日々を暮らして、無為に時を過ごしているのさえ辛い。
そう言って追い返すのだが、講師も教師達も、僕の実績や才能を惜しむ言葉を重ねて、僕を説得しようとする。

――頼むから、もう放っておいてくれ。
そう言い放ってドアを乱暴に閉める。
静寂のただ中、僕は睡眠とアルコールに逃避する日々を過ごしていた。

食欲は殆どないに等しく、空腹感もおぼろげにしか感じられない。
興味本位で煙草に手を出してみたが、咳き込むばかりでうまくなんかない。
外に出る気力さえないのだが、これが街中なら、簡単に所謂“草”や薬物に手を出していただろう。

そこまで堕ちたくはないという最後の矜持だけが、かろうじて僕に残されていた。

拍手[17回]

なんか暫くぶりに自ブログ見てます…ログインパスワード請求されるほど、一週間くらい見てなかった…

今もなおのぶニャがに夢中です…というのも、我が愛しの「きニャ暁彦」様の育成に夢中なのですw
理事長様への愛は微塵も変わっておりませぬ!!
更にニャがコラボで本家本元「100万人の信長の野望」にまで手出しする始末です…
その昔弟がハマってて「何が面白いんだよ」とか思ってましたが面白いんですよこれが!!

ついつい「影武者徳川家康」や「SAKON」池上遼一様作画の「信長」、そして横山光輝作の信玄・秀吉・信長・勝頼・正宗・家康まで全部引っ張り出して再読している最中ですorz
中高生の頃これにハマってたら歴史の成績もっと上がってたはずw

毎日戦国時代のお話ばかりが頭を巡り、歴史マンガのお陰でニャがに出てくる「ねこ武将説破」クイズ3つのお題、何も見ずパーフェクトに回答することもできるようにw

きニャさまこと吉羅暁彦様。
猫の姿ですが、彼の得意技「交響曲」かなり使えます。
遠距離から多人数目掛けて400~500ものダメージを負わせることができます。

「必殺」身につけてた頃には一撃で相手を殺せましたが、今は「智勇兼備」移植させたのです。
あと早合レベル3を、佐々さん6枚くらいで「早合4」にアップさせましたw
(移動速度や術の発動速度が速くなる。つまり吉羅様のターンがバシバシ続くことが増える)
まだまだ佐々さん、ニャーゴロさん、他早合素材げとしてあるので早合5にさせるか。

始めて1ヵ月、初心者しかも微課金の我が隊の不動のエースですw
そんで金やんの「ねこやなぎ3」かなり発動するのでなかなか面白いかも。金やんも早く覚醒させたい。佐々木スコじろうもかっこいいので覚醒させたい。猫足レベル5にさせたら相手の攻撃かわしまくりで凄いですw

……そんなこんなで、すっかりニャがの合間にコルダをやってる感じになってしまいました…が。


前回の理事長…「誰これ?」って感じの仕上がりでしたが…
ハロウィンナイトのイベ、シナリオのノベライズではなくて、吉羅様の視点の独白にさせようかと思案中です。

まだこのブログを見てくださってる方、書いて欲しいよという励ましの意味での拍手をお願いします♪

拍手[4回]

(のぶニャがコラボ!きニャ暁彦様を買った私が、きニャ様を使った戦闘を、吉羅暁彦理事長からの視点で回想します。なるべくのぶニャがを知らない方にもわかりやすく書いたつもりです♪)



……今回も、総大将は私に決まった。
まあ私の職業は軍師であることだし、知略を駆使した戦法や兵法はお手の物だ。
今度の戦場は比叡山の裾野にある。
一見開けた土地に見えるが、どっこい岩の壁があちこちに屹立して狭い一本道が三本あるのだ。
そこへ侵入して行けば敵陣からの一斉攻撃を受ける、その覚悟で臨まなければならない過酷な戦地だ。

相手軍を率いる総大将は織田のぶたニャー(信忠)だ。
かの第六天魔王・信長の嫡子である彼は、父親そっくりの酷薄な目つきが非常に印象的だ……勿論悪い意味で。

私の陣は、鉄砲隊を率いる狙撃力が高い侍大将がシャムづ(島津)家久。
彼は火属性レベル11、攻撃力94、勲功値225の歴戦の勇者だ。
伏兵看破・陣中見舞い(周囲の人間の体力が回復する)、完璧主義者という高スキルを身に着けた軍師・月森君はレベル14、勲功値134の足軽大将。
騎馬武者レベル14の王崎シンぶ君の本業は僧侶であり、どうも敵に塩を送るのが趣味らしい。(信武でしのぶとは読ませないらしい)
何故か職業が「茶人」の組頭、レベル14かニャざわ紘人。
彼は多々のスキルを身に着けているにも関わらず、猫特有の気まぐれさでそのスキルを発揮させる機会は少ない。

そんな、頼りにしたいのだがあまり頼りにならない?味方に、攻撃力を重視した凸状の陣を組ませ、いざ開戦。

それらを率いての戦闘についての辛苦を回想してみることにした――
……非常に苦痛を伴う作業ではあるが、後の試しにもなるだろう。
のぶニャが世界に紛れ込んでしまった私の苦渋の一端でも、私のファンである女性陣に知ってもらえるのならありがたい。
無論、男性陣も是非ご一読のほどを。


――まずは王崎君の騎射からだ。
馬に乗った上での射撃はタイミングが非常に大事だが、その点は心配ない。

彼の力量は攻撃力142、防御64、速度89等、総合レベル30にまで上げてあるのだ。
もっとも、攻撃力212、防御力108、速度118等で総合レベルが50に到達した私には比肩しえない。

私は既に「覚醒」している――
つまり、初期段階での修練の限界を突破して、中期に入ろうとしていた私は覚醒段階一段目で攻撃力50アップを選んだのだ。
その私の異常なほど高くなっている戦闘力には遠く及ばないが。
次に目指すべく第二段階では兵力を増やそうかと思案中である。

王崎君の馬上からの銃撃は、雑兵に399のダメージ。
もう片方の雑兵からの攻撃を難なくかわした。
私が横から彼の援護に出てきて、射撃で651のダメージを与える。
金澤さんの得意技「ねこやなぎLV3」で相手は挑発されて、頭に血が昇った。

王崎君の馬が敵を蹴り上げて350のダメージだ。
私は相手騎馬の突進を躱しつつ体勢を反転させて銃を撃ち、「交響曲」
――必殺技に該当するのだろうそれで、相手の一将に1200もの瀕死の重傷を負わせた。
「ニャー」と悲しげな声をあげて敵陣の外に逃亡した将は、死亡確定だ。
無様な敗走をする際に可愛らしい鳴き声をあげて、汗の粒を散らしている様はいつ見聞きしても笑える。

王崎君は、「岐阜中将」などという謎の技を食らってしまった。
なんだこれは、初めて見るものだ。
そういえばのぶたニャーの官位がそれだったか……確か、権の中将に任ぜられたばかりなのだったな。
己の官位を声高に吹聴するという馬鹿げた技に苦笑したくなる。
それは常識人の王崎君もさぞ面食らったことだろう、かわいそうに。

別な側面からも突かれて、王崎君は合計430ものダメージを受けた。

更にのぶたニャー(信忠)と敵武将の二匹は五輪奥義、「篭絡の計」を繰り出した……
なんたる不覚か……!
金澤さんの頭上には、ピンク色に輝く愛らしいハートマークが灯ってしまった。


……男が、いかつい男に篭絡されて一時でも心を奪われてしまうとは。
それも、相手は第六天魔王信長の嫡子であるのぶたニャーだ。
あろうことか、あの冷血の輩に心惹かれるなどとは……
世間的には冷徹と評されて、「第六天魔王のぶニャがを演じるには最適」とお墨付きを得ている私と行動を共にしている時点でお察しなのか?
私の同僚でもあり先輩でもある金澤さんが、こんなくだらん策に陥るとは……!

戦端が開かれてすぐに波状攻撃を受ける味方陣の、目を覆いたくなる惨状だが、総大将である私が動揺している姿を晒してはいけない。
ここは意地でも平然としていなくては。
私は憤怒の気持ちで交響曲を唱えると、1244と446、321という大ダメージの一撃を一挙三人に浴びせた。
これほどの凄まじい攻撃を見た者はあるまい。
私は初期段階にはありうべからざるレベルの、異常とも言える火力を誇っているのだ。

隘路に追い込まれて集中攻撃を受けている王崎君に目配せすると、彼が頷く。
私と王崎君により「医心方」の詠唱を行った。
これで彼の傷がかなり回復し、1000ポイント中800近い体力を取り戻せた。
しかし、その矢先に王崎君は150、200と連続して打撃を受けた。
折角、無傷であった私が苦労して王崎君の為に繰り出した回復技なのに。

相手は「土竜攻め」を仕掛けてきた。
これは「一定の確率で、敵複数の防御力を下げる」ものだ。
金澤さんがそれを食らうが、未だ正気に返っていない彼は頭上にピンクのハートを浮かせたまま、なんと味方である王崎君を銃で撃った。

僅か25のダメージだが、情けないにも程がある。
男に誘惑された挙句に同士討ちをやらかしてくれるとは。
ああ、所詮は茶人などという風流者を装った無頼漢など連れてくるのではなかった……

今頃島津、いやシャムづの「狙撃LV1」が出て、相手に120のダメージを与えた。
そして今までほぼ存在を感じることのなかった月森君が、4ターン目にしてやっと銃を撃った。
遅い、遅すぎる。
遅きに失する。
大体が、「陣中見舞」だのという凄まじい回復技を持っているくせに全く回復役を果たさず、焼け石に水程度の40の極小ダメージを負わせただけかね?
戦場に於いてもマイペース過ぎて協調性が微塵も感じられないのは一体どういう訳なのかね、月森君?

と思ったら、月森君と王崎君コンビによる「赤備え」が出た。
これは敵一体を攻撃し、命中すると自分自身の攻撃力も上がる代物だ。
王崎君に発動したそれは、見事に敵に250のダメージを与えたがその後敵から150、100と連続した攻撃を受けてしまった。
騎馬で敵陣深くに突入している彼が、どうしても集中砲火を浴びてしまう地形に潜り込んでいるのだ。

金澤さんは3のダメージを食らってひっくり返っていたが、未だ彼の頭上にはピンクハートが輝いている……
ええい、目障りな。
私が敵を撃ち、651のダメージ。
なんなのだこの数字は、連続しているな。
その後、島津・月森・王崎による三連続攻撃。
忘れていたが金澤さんもハートを浮かべたまま敵を撃ち25のダメージを与えていた。
王崎君が相手に125、すると相手から250返される。

いけない、王崎君の命は風前の灯だ。
こんな窮地なのに行動力の遅い月森君が「陣中見舞」すら出せずに金澤さんの背後にくっついているのが腹立たしい。
回復役を果たさない彼のせいで、私がわざわざ攻撃ターンを犠牲にしてまで異様に強力な火力を出さず、敢えて回復技を担う羽目になったのに。

そして敵軍の残党が残り2名、総大将のぶたニャーと副将(名前失念、太った茶虎猫、青の着物)のみになったその時。
私の交響曲の出番だ。
今までのストレスを発散するかのように私が攻勢に出る。
愛銃が勢いよく火を噴くと、総大将のぶたニャーに1225の致命傷、更に894で副将を撃滅した。

――かくして、織田のぶたニャーを総大将とする敵軍は私の銃により全滅した。


……敵軍全員を殺し尽くし、殲滅することに成功した。
もはや生き残りは一人もいない。
総大将である私自らが、敵軍の総大将と副将の首級を挙げてみせたのだ。

今回の手柄は私が独占状態だ。


……孤軍奮闘といったところだろうか。
ま、私の獅子奮迅の活躍で敵を全員撃破したのだと言っても過言ではあるまい。
他の味方は正直飾……ゲフンゲフン
いやむしろ私の足をひっぱ……


こうして改めて書き記していると、つくづくそう思う。
私こそが「第六天魔王」のぶニャが役がハマっていると、のぶニャが指南役の「ミャーもと武蔵」に言われたが……

是非も無し。
なりきるのなら開き直ってなりきらないと見苦しい。


のぶニャがコラボのチュートリアルをクリアして、苦戦しつつこの「短編ねこ戦記」で千点取り、なんとか月森君の楽譜を入手しはしたが。
私の戦いはまだまだこれからも続く。

二巡目は、どんどん敵が強くなっていく最中なのだ。

比叡の戦いを終えた私は休む間もないはずなのだが、手傷を負った王崎君や金澤さんを、傷によく効く温泉に入れてやらねばならない。
戦地をのそのそと移動しているのが殆どだった月森君、遠隔地からの狙撃重視なしミャづは、ほぼ無傷でしれっとしているのが小憎らしい。

コルダのグループだからと相性がいいと、我々の編成にニッコリマークが浮かぶのだが、とんでもない。
私が攻撃力重視の火属性、かつ得物は銃なのだが、行動力の素早さも重視する風属性も高いので、同じく俊敏に移動できて攻撃力の高い人材が欲しいところだ。

そろそろ、私は修練レベルを上げるために「器量を磨く」ことをせねばならない。
今の所私はこの軍では最強なのだが、もはや修練レベルが高すぎて50で高止まりをしている足踏み状態なのが我慢ならない。
そこで、コルダでのBPならぬニャオポイント=NPで無料で入手した「高坂ミャさのぶ」を、密かに私のパートナーとして選ぼうとしている。

彼は無料の「ニャオみくじ」でなんと三枚も出てしまったので、そのうち一枚を鍛えに鍛え、彼の身を犠牲にして、持てる戦闘能力を全て私に捧げさせるのだ。

……ん?
なんだね、日野君?
その咎めるような眼はなんなのだね?
それが第六天魔王さながらだと言いたいのかね、君は?
戦国時代、食うか食われるか。
昨日の味方は今日の敵。
現代社会の甘い常識など通用はしないのだよ。

幸いにして彼は火属性、私もそうなので最初から相性は良い。
彼の勲功値もレベルも最大値に引き上げて、鍛錬を重ねたその身を、忠誠を私に捧げてもらう時がいずれやって来る。

その後、彼はどうなるのかって?
なんとなく想像はついているだろう?

無論、彼は消え失せるのだよ。
私の中に彼の能力を宿らせれば、高坂ミャさのぶという本体は消滅する。
惨いのは、例え私の修練レベルを上げられず失敗に終わっても彼本体は消えてしまうということかな。

仕方が無い、これが「のぶニャが」の世界なのだからね。
戦国武将が可愛らしい猫の姿に身をやつしているという外見に似合わず、その世界観はシビアなものだね。
強い者は、より一層の強者を役立たせるためにその身を捧げて尽くす。
戦国の世の理(ことわり)そのままではないかね?

君と論戦したり、ぐずぐずしている暇はないよ。
私はまだやることがあるのだ、今日はひとまずこれで失礼するよ。

ああ……三巡目では、第一章「星奏学院にて」の初回の敵にやられてしまった。
☆5つの強敵の集合体で、相手は「かニャざわ紘人」が率いる精鋭部隊だ。
なんと彼らは四人の将がそれぞれ1450もの手勢を引き連れているではないか。
総大将のかニャざわ紘人自ら1450もの兵を従えているのだから、敗北も致し方ない。
私の第二段階での覚醒では、今は1000しか持てない手勢を増やすことにせねばなるまいな。

私の銃は一度に数名の敵にダメージを与えられるが、私の愛銃ウィンチェスターM70の火力はやはり異様なほど強いのだろう。
とある殺戮小説のタイトルにもそのまま使われている、世界的にも有名なこの銃が私はたまらなく好きだ。

そのうちここの作者がこのスナイパーライフルを構えた私のシリアスな絵を描くだろうから、今少しの間待っていてくれたまえ。
何せ女のくせに……といっては失礼だが、軽度ミリオタに加えて自分までがライフル撃ちに目覚めた狂気のイラストレーター兼漫画家、時に劇画家(自称)なのだから。

この「短編ねこ戦記」では、周回数が増えるごとに段々と敵の強さが増してくるのはやり込み甲斐を持たせるためなのだろうな。

傷が癒えるまで暫し温泉で休憩をとらなくては……

……妻である濃姫に体をほぐしてもらえれば、一層回復が早まる見込みなのだがね?

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